今すぐバイデンは身を引くべきだ(6月27日の討論会後、夫人と共に退場) BRIAN SNYDERーREUTERS
<米大統領選テレビ討論会は、バイデン大統領と民主党にとって比類なき大惨事だった。極めて異例だが、バイデンが撤退して他候補と交代する時間的な余裕はまだ十分にあり、その方法は3つある>
6月27 日に行われた米大統領選テレビ討論会は、バイデン大統領と民主党にとって、そしてこの国の民主主義の未来を案じる全ての人にとって、現代アメリカ政治史上比類のない大惨事だったと言わざるを得ない。トランプ前大統領との討論に臨んだバイデンは、救いようがなく混乱していて、見る者の不安をかき立てた。
バイデンは直ちに身を引くべきだ。11月の本選挙を戦う民主党の大統領候補を正式に決める民主党全国党大会の開幕は8月19日。バイデンが大統領選から撤退して、ほかの誰かと交代する時間的な余裕はまだ十分に残されている。
確かに、極めて異例のことではある。アメリカの歴史上、これほど選挙が近くなった時期に大統領候補を差し替えた経験は、民主党にも共和党にも前例がない。それでも、方法は3つある。
1つは、いまバイデンが大統領を辞任するというもの。奇想天外な発想に思えるかもしれないが、さまざまな面で最も簡単なのはこの方法だ。
今すぐバイデンが辞任してハリス副大統領が大統領に昇格すれば、ハリス新大統領は党大会までの6週間ほどの間に、新たに勢いをつくり出し、支持基盤を固め、現職としての求心力を発揮できるかもしれない。政治手腕を疑う声も多いが、副大統領であることの足かせから解き放たれれば、そうした懸念を払拭する活躍を見せる可能性もある。
もしハリスがバイデンよりわずかでも人気があれば、すんなりと大統領候補に指名されるだろう。世論調査分析サイトの「ファイブサーティーエイト」によれば、支持率と不支持率の差を見ると、現時点でのハリスの不人気度は、バイデンとトランプの両人よりも低い。
もう1つの方法は、バイデンが(即時の大統領辞任はしないものの)再選を目指さないと表明するというものだ。その決断の理由としては、健康問題や家庭の事情(バイデンの息子は3つの重罪で有罪評決を受けばかりだ)を挙げてもいいし、若い世代にバトンタッチすべきだと突然ひらめいたと言ってもいいだろう。
この場合、党大会でバイデンに投票することになっていた代議員たちは、誰に投票するかを自由に選ぶことができる。ハリスや、カリフォルニア州のニューサム知事、ミシガン州のウィトマー知事、ブティジェッジ運輸長官などの面々の間で、直ちに激しい競争が始まるだろう。
それでもバイデンが身を引かなかった場合は......
しかし、バイデンがことの重大性に気付かず、あるいは見て見ぬふりをして、自発的に身を引かない可能性もある。この場合は、もう1つの方法を実行して、バイデンに投票することになっていた代議員たちが「正しい行動」を起こすしかない。
民主党全国委員会の規則に、こんな一節がある。「ある大統領候補者への投票を誓約して全国党大会に選出された代議員は、良心に従い、自らを選出した人々の思いに沿って行動するものとする」。党大会でバイデン以外の人物を候補者として選出するための抜け道としては十分すぎる。
民主党全国委員会の規則を起草した人たちは、少なくとも頭の片隅ではかすかに、予備選で勝利を収めた人物が健康の悪化や認知能力の低下により、十分に機能しなくなっているのに、本人が現実を認めようとしないケースがあり得ると思っていたのだろう。
いま私たちの目の前で起きているのは、そのような現象にほかならない。
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【動画】討論会の最後のスピーチで口ごもるバイデン
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