25日からはじまった万博の国際会議。

準備が本格化するにともない、私たちの生活にも影響のあるこれまでとは違う課題も見えてきました。


■大阪・関西万博に参加国の心配事は宿舎から会場までのアクセス

【吉原功兼キャスター】「これからIPM(国際会議)に参加する参加国の方々が今、続々と受付に訪れています」

25日朝、奈良市内の国際会議場には、来年の大阪・関西万博にパビリオンを出展する、およそ160の国と地域などから、担当者およそ580人が集結。

集まった人の中には、民族衣装に身を包んだ人の姿もありました。

(Q.パビリオンの建設はどうですか?)
【リベリアの担当者】「パビリオン建設は進行中ですが、様子を見なければなりません。来年の大阪・関西万博は良い万博になると思います」

(Q.万博開催に懸念は?)
【ポルトガルの担当者】「ありません。ポルトガル館の建設は8月に開始し、重機の使用は10月半ばまでに終わります」

【オランダの担当者】「オランダのパビリオン、来てや!」

これまで建設の遅れが懸念されていた独自出展のパビリオンをめぐっては、建設業者が決まった国がおよそ40カ国に達したということです。

これで4回目の開催となる大規模な国際会議。

今回はスタッフの日本での生活など開幕後をみすえた、より具体的な項目がメインテーマです。

【セルビアの担当者】「建設についてはもう全て分かっているので、今はイベント運営の準備段階に入っていると思います」

開幕に向けた準備が加速する中、25日の会議で各国の関心を集めた、“ある問題”が私たちの生活にも大きく関わってきそうです。

それが…
【オランダの担当者】「一番の関心事は、万博でバスが足りるかどうかです」
【ヨルダンの担当者】「万博会場は島で、道は一本しかない。それが心配です」

万博会場までのアクセスに関して、大きな課題があることが明らかになってきたのです。

会議を前に24日、大阪・梅田のホテルにやってきたリトアニアの担当者。

【リトアニアの担当者】「大阪に来たのは、梅田宿舎を内覧するためです。現時点では10人ほどがリトアニアから来て、大阪に滞在する予定です。パビリオンのガイドとして働く人達ですね。あまり会場から離れておらず、6カ月住むのに便利な場所を探しています」

これまでの万博では、会場近くに「エキスポ・ビレッジ」と呼ばれる、スタッフが生活するエリアが作られることが一般的でした。

しかし今回は、費用が足りないなどの理由で、そういった施設はありません。

そのため博覧会協会が、大阪府内の公営住宅やホテルなど、およそ2300人分の宿舎を確保し、参加国に紹介していますが、会場まで1時間以上かかる場所もあり、各国の懸念事項になっています。

【リトアニアの担当者】「ここは大阪駅からとても近い場所にあります。会場からも30分ほどです」

ポーランドやチリは平野区や守口市に滞在することを検討しているということですが、実際に記者が候補地から万博会場付近まで行ってみると…。

【記者リポート】「宿舎を出てから現在の終点まで55分でした。会場までは延伸中の1駅あるので、およそ1時間程度かかることになります」

■会場までのアクセスは大阪メトロ・中央線に集中

さらにすべての宿舎から会場までのアクセスは、最終的に大阪メトロ・中央線に集結します。

普段から通勤・通学で混雑する中央線ですが、万博期間中は多い日で、来場者およそ12万人が利用する予定で、1時間あたり16本から24本に増便しても、ピーク時の混雑率は140%になるとの予測もあります。

しかも、そもそもこの予測には、万博で働くスタッフの人数は含まれていません。

これには市民、そして各国双方から不安の声が…。

【中央線を利用する人】「すごく大変なことになるんだろうなって。ベビーカーとか使ってるから、色々気を使わなきゃいけないかなって思いますね」

【中央線を利用する人】「今の時点でも結構多いなと思って。使ってる人からしたら、今以上に過密って考えられない」

【スイス担当者】「スイスにはラッシュアワーがありません。でも分かっているよ。日本では地下鉄でこんな感じになるんだよね。これはでもあなたたちのいつものルーティーンだよね。愛知万博では本当に来場者が多かったから、シャトルバスが出ていました」

■博覧会協会は「中央線にトラブルあれば、万博会場を開けられない日も」

運営する博覧会協会は、この状況をどうとらえているのか聞きました。

【博覧会協会 淡中泰雄交通部長】「地下鉄需要の重なりを見て、可能な範囲で(海外スタッフの出勤を)前倒ししていただくとかは、これから調整していただく必要がある。(Q.中央線止まった時の影響は?)そこはこれから検討しないといけないところ。(Q.スタッフも来られないと会場も開けられない?)そうですね、それはケースとしてありうると思いますね。(来場者に)たくさんき来ていただいても、メトロが止まると帰れなくなるので)

来場者が会場入りする方法は、新大阪や空港発のシャトルバスなども想定されていますが、各国のスタッフは道路渋滞なども考慮し原則、中央線を利用することになっています。

会場アクセスの大きな比率を中央線が担っている以上、トラブル時には万博会場を開けられない日も出るという驚きの可能性を示唆しました。

より具体的な運営方法を検討する段階に入って明らかになった課題。市民生活と万博の両立に向けて乗り越えるべき壁はまだまだありそうです。

■交通混雑対策に「万博TDMパートナー登録制度」 “お願いベース”ではなくインセンティブも必要

来場者だけでも、1日20万人以上を見込んでいるという万博ですが、交通混雑はどうなるのでしょうか。

解消するために協会は、大阪府内の企業に“時差出勤”や“テレワークの活用”、“通勤・配送ルートの変更”などの“協力を呼びかけ”ます。
さらに「万博TDMパートナー登録制度」という制度をつくり、これに企業が登録すると、
・混雑状況などを通知。
・取り組みを万博のHPで公表するため、企業イメージが向上
などがメリットになる、と打ち出しています。10000社の登録を目指していますが、現在はおよそ400社の登録にとどまっているということです。

【大阪大学大学院 安田洋祐教授】「ある程度は有効だと思うんですけれども、お願いベースで何かやってもらうだけではなくて、例えば時間帯によって、混雑時は電車料金を高くするダイナミックプライシング等を併用して、少し経済的なインセンティブと、こういったお願いベースの取り組みを合わせながらやっていった方が、より効果が期待できるんじゃないかなと思います」

■「並ばない万博」を銘打ったのに、日時指定なしの「紙のチケット」の販売?

交通混雑の対策は他にもあります。

万博協会は「並ばない万博」の実現に向け、来場日時やパビリオンの観覧も、完全予約制にすると考えています。

【大阪大学大学院 安田洋祐教授】「僕自身、上海万博に行った時、とにかく混んでいたんですよ。人気のパビリオンは数時間待ちというのが当たり前で、行ったはいいものの、そこまで満足度が高かった印象は無いんですよね。最近、テーマパークでも待たない事前予約が普及してきているので、そういったIT技術を活用して、できるだけ並ばない形で日付を決めるだけじゃなくて、各パビリオンでスムーズに並べると待ち時間少ない間に散歩したり、お土産グッズを買ったりすることができるといいですよね」


しかし6月21日になって、吉村知事は「コンビニでも、日時指定なしのチケットの販売をするべきだ」と発言しました。

これはスマホに不慣れなお年寄りなどが、万博に行きやすいようにということを考えての対策だそうです。

ただ予約制にすることで、混雑をある程度コントロールしようとしていたのに、予約なしチケットということになると、予測できなくなりますよね…。

【関西テレビ 神崎博報道デスク】「1970年の大阪万博の時は、皆さんアメリカ館めちゃめちゃ並んだとか、ソ連館めっちゃ並んだとか、混雑と万博というのは、ある種セットと思われています。それを解消するために、今回はスマートフォンを使って、完全予約制にして、並ばない万博と銘打ったんですけど、結局、紙のチケットで日時指定せずに来る人ができたら、混雑の予想ができなくなるようになってしまいます。せっかく新しい万博を見せようとしてたのに、いつもの『並ぶ万博』を繰り返すことになるので、ちょっと残念かなと思います」

交通混雑ということになると、私たち市民にも直接影響する部分もありますので、万博期間中も私たち市民の不安なく生活を送れるような情報発信をしてほしいと思います。

(関西テレビ「newsランナー」2024年6月25日放送)

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