英ロンドンの郵便局(ロイター=共同)

【ロンドン=黒瀬悦成】英国全土で中国企業が偽造したとみられる偽の郵便切手が大量に流通し、郵便事業に深刻な悪影響を及ぼしている。偽造切手が貼られた郵便物を受け取った側が罰金として5ポンド(約960円)を郵便局に請求される事例も続出し、郵便会社に対策を求める声が急速に広がっている。

偽造された郵便切手は通常の切手に比べて発色や艶が異なるとされるが、専門家でも本物と見分けがつきにくいとされる。このため一般市民が偽物と知らずに購入して使い、郵便の受け取り手が罰金の対象になることも少なくない。

正規の切手の金額は1枚85ペンス~2ポンド10ペンスだが、英紙テレグラフ(電子版)によれば、中国国内にある偽切手の製造業者が印刷注文を受け付け、それを何者かが英国に密輸出しているとされる。ある製造業者は30万枚以上の注文であれば1枚あたり4ペンスで注文を受け付けているほか、別の業者は1週間で100万枚を印刷可能だという。

中国政府が直接関与しているかは現時点で明らかでないが、治安問題や経済安全保障の専門家は同紙に対し、一連の行為は中国共産党体制の「暗黙の了解」の下に展開されている「経済戦争だ」と警告。英国会議員の間からは中国に厳格な対抗措置をとるべきだとする声も相次いでいる。

中国からの偽造切手は米国でも昨年に大量に出回り、赤字体質の米郵政公社の経営に深刻な打撃を与えている。

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