中国の李強首相は17日、訪問先のオーストラリアの首都キャンベラでアルバニージー首相と会談した。中国首相の豪州訪問は2017年以来で、両氏は共に「率直な」会談を評価した。アルバニージー氏は昨年11月に中国の習近平国家主席と北京で会談しており、一時悪化していた両国関係の改善の流れが続いている。
両国は今回、経済や教育、気候変動対策の各分野での協力で一致した。李氏は会談に先立つ16日に南部アデレードの動物園を訪問し、パンダの貸与継続方針を表明して豪中の「雪解け」を演出。17日には、一方的なビザ免除措置の対象国に豪州を加えることも明らかにして、豪州重視の姿勢を印象付けた。
アルバニージー氏は会談後の記者会見で「建設的な対話だった」と述べた。ただ、今年5月に黄海で任務中の豪軍が中国軍の戦闘機から危険行為を受けたことや、豪国籍の作家ヤン・ヘンジュン氏が19年から中国で拘束され続けていることなどについて懸念を伝えたという。「私たちには違いがあるからこそ、率直な会談が重要だ」と強調した。
中国外務省によると、李氏は会談で「中豪両国の発展は双方にとって挑戦ではなくチャンスだ」と強調。「中国はより成熟し安定した中豪の包括的戦略的パートナーシップ構築のため共に努力したい」と呼びかけた。中国としては、豪州との関係を改善させることで、米国主導の対中包囲網を揺さぶる狙いだ。また、中豪の経済協力を活発化させ、低迷する中国経済の立て直しにつなげたいとの思惑もにじむ。
豪メディアによると、両国の合意の調印式では、昨年10月まで3年2カ月、中国で拘束されていた豪国籍のジャーナリスト、チェン・レイ氏が豪メディアの記者として取材に参加。中国政府関係者が、チェン氏の視界を遮る一幕もあった。
李氏は、13日にはニュージーランド(NZ)を訪問し、ラクソン首相と会談した。李氏は、NZが、対中けん制を意図する米英豪の安全保障枠組み「AUKUS(オーカス)」と先端技術分野での協力を検討していることに懸念を伝えた。会談で両氏は貿易や経済、環境問題での連携を確認したが、立場が異なる議題もあると強調した。
NZは、米英豪カナダとの英語圏5カ国で機密情報を共有する「ファイブアイズ」の一員だ。オーカスに関しては、豪州への原子力潜水艦の導入計画がNZの非核政策と相いれないとの立場をとるが、先端技術分野での協力には積極的な姿勢を示す。また、6月には南シナ海で中国との対立が深まるフィリピンとの間で、演習などでの相互支援協定を締結した。【バンコク石山絵歩、北京・岡崎英遠】
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