世界平和サミットで発言するウクライナのゼレンスキー大統領=スイス中部ビュルゲンシュトックで6月15日、ロイター

 ロシアに侵攻されているウクライナの和平案を協議するスイスでの首脳級会合「世界平和サミット」は16日、2日間の日程を終え閉幕した。ウクライナのゼレンスキー大統領は閉幕後、「我が国と全てのパートナーにとって大きな成功だった」と成果を強調した。今後も和平の実現に向けた取り組みを「続けていく」と述べ、すでに複数の国が次回サミットの主催に関心を示していると明かした。ただ、ウクライナや同国を支援する西側諸国と、ロシアや中国などとの溝は深く、和平交渉の早期実現は見通せない。

 サミットには約100の国と機関が参加した。共同声明は16日に約80カ国の支持で採択されたが、中立的立場のインドやサウジアラビアなどは加わらなかった。ロイター通信によると、共同声明では、この戦争による人的・物的被害と世界的な影響を指摘し、「武力で(他国の)領土の一体性を脅かしてはならない」という国際法上の原則を確認。ロシアが占領するザポロジエ原発をウクライナ管理下へ返還するなど核の安全確保▽食糧安全保障を脅かさないこと▽捕虜の交換と連れ去られた市民の帰還――を求めた。

 ゼレンスキー氏は「共同声明は私たちの意図を完全に反映している」と評価し、「サミットの全ての参加者がウクライナの領土の一体性を支持していることが重要だ」とも述べた。ただ、フランスのマクロン大統領はサミットの中で「我々の取り組みに加わる国の輪をもっと広げていく」と語り、参加を見送った国々との対話の必要性を指摘した。

 一方、プーチン露大統領は14日の演説で、改めて強硬姿勢を示した。一方的に自国領への併合を宣言したウクライナ東・南部4州全域からのウクライナ側の撤退や、北大西洋条約機構(NATO)への非加盟を求めるなど、降伏の要求にも近い内容だ。

 今回のサミットにはロシアは招かれず、対露関係を深める中国も出席しなかった。「グローバルサウス」と呼ばれる新興・途上国の有力国のうち、インドは閣僚級の代表を派遣、ブラジルはオブザーバー参加という形を取った。和平の仲介に意欲を示してきたトルコとサウジからは外相が出席した。【ベルリン五十嵐朋子】

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