プーチン大統領は14日、ロシア外務省の高官らに対する演説で、ウクライナ侵攻の停戦や交渉開始の条件として、ウクライナが北大西洋条約機構(NATO)加盟断念、自国領と主張する4州をロシアに引き渡す必要があると明言した。この要求に対して、ゼレンスキー大統領は、「ナチス・ドイツの独裁者ヒトラーと同じやり方だ」と反発した。NATOのストルテンベルグ事務総長は、「これは和平の提案ではなく、さらなる侵略の提案だ。ウクライナの領土から撤退すべきはロシアだ」と非難した。

ウクライナが提唱する和平案を協議する「ウクライナ平和サミット」が15日からスイスで開催されている。「ウクライナ平和サミット」では、ウクライナが提唱する10項目のうち、参加国の賛同を得やすい、【1】核・原発の安全保障、【2】食糧安保、【3】捕虜解放の3項目に絞り込んで合意を目指す。平和サミットには、岸田総理やハリス米副大統領らが出席、約92カ国の首脳や閣僚級らが参加した。ロシアの不参加に反発した中国やオブザーバーのブラジル、サウジアラビアなどは参加しないと当初は見られていたが、ブラジルは特使を派遣し、サウジアラビアは閣僚が出席した。

ウクライナ平和サミットの開催前に、ゼレンスキー大統領は2日、「ロシアが中国の助けを借りて、平和サミットに参加しないよう各国に圧力をかけようとしている」と批判した。ゼレンスキー氏は、13日に行われたバイデン大統領との会見で、「(習近平国家主席は電話会談で)私と約束した。もし彼が正直な人間なら武器を売らないだろう」と明らかにした。一方、バイデン大統領は「中国は兵器を製造する能力や技術を(ロシアに)供給している」と述べた。イタリアでのG7サミットは首脳宣言を採択し、対ロシア経済制裁の対象に中国を組み込んだ。G7は、「ロシアとの軍事転用可能な技術・部品の取引に関与すれば、中国の金融機関をG7の金融ネットワークから締め出す」と警告した。

13日からイタリアで始まった主要7カ国首脳会議(G7サミット)は、ロシアの凍結資産約3000億ドル(約47兆円)による運用利益を活用して、ウクライナ支援を目的に、年内に500億ドル(約7兆8000億円)の融資を実行する方針で基本合意した。創設する基金に米国や英国などが資金を貸し付け、その基金からウクライナに贈与する仕組みが設定される見通し。凍結資産の運用利益を各国への返済にあてる。これに対して、ロシア外務省のザハロワ報道官は、「違法な取り決めである」と批判し、「ロシアには、欧州の資産と資金が十分にある。報復は必然で、EUにとって大きな痛みを伴うものになる」と強く牽制した。

★ゲスト:駒木明義(朝日新聞論説委員)
★アンカー:末延吉正(ジャーナリスト/元テレビ朝日政治部長)

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。