6月14日(日本時間15日)に閉幕したイタリア南部ファサーノでの主要7カ国首脳会議(G7サミット)では、首脳声明にアフリカや中東などから欧州に大量流入する移民対策が盛り込まれた。
6月に行われた欧州議会選挙では、欧州連合(EU)に懐疑的で移民に厳しい姿勢を示す極右政党が躍進し、かつてない存在感を高めている。
イギリスでは4月、難民認定を申請するため不法に入国した人たちをアフリカのルワンダに強制的に移送するための法案が議会で可決された。スナク政権は7月ごろ移送を始めたい意向だ。
イギリス以外でも、イタリア、ドイツ、デンマークなどが同じように不法移民や不法入国者を自国外に強制的に移送・収容する“外部委託”を検討している。
これを受け、16日のフジテレビ系『日曜報道 THE PRIME』(日曜午前7時30分)では、移民・難民問題に詳しい識者を招き日本の実情も交え議論した。
元外交官で内閣官房参与の宮家邦彦氏は「(移民に)今までオープンだった欧州がもう背に腹はかえられなくなっている。メルケル首相時代に相当寛容でおおらかに(移民を)受け入れた結果、ドイツ国内では何が起きたか。その反省もあって、このような(不法移民の第三国への強制移送の)動きは増えることはあっても減ることはない」との認識を示した。
ジャーナリストの櫻井よしこ氏(国家基本問題研究所理事長)は「総人口に対する移民の割合が10%を超えると社会問題が顕在化してくる。財政的にもそうだ。統合しようとしても共生しようとしてもうまく行かず、社会の分断、ヘイトスピーチ、犯罪などが増えてくる」と指摘。「日本は欧州の事例に学ぶべきだ。欧州は増えすぎる移民についてようやく現実を見始めた。優しい心で『(移民を)受け入れましょう』というのは簡単だが、受け入れたあとの結果が大変だという事例を示している。これからも移民、外国人労働者に対する(欧州の)政策は厳しくなる」と述べた。
番組コメンテーターの橋下徹氏(弁護士、元大阪府知事)は「(『多様性』『外国人との共生』など)政治問題について抽象的なスローガンや主張では現実問題は解決できない。大量の不法移民が入ってきて現実の問題が生じることに解決策を提示するのが右派も左派もなく政治家の役割だ」と強調した。
以下、番組での主なやりとり。
安宅晃樹キャスター(フジテレビアナウンサー):
イギリスでは不法移民への対応が財政をかなり圧迫しているという。そこで7月ごろから(開始することを想定して)アフリカ東部のルワンダに不法移民を強制移送する計画を進めている。実際に準備が着々と進んでいる。ルワンダには外観も内装もきれいで、ベッドなどが完備されている移民用住宅が用意されている。
では、強制移送にかかるコストはどうか。不法移民を国内にとどめた場合、宿泊費なども含め1人あたり約1940万円のコストがかかるという。一方、いま計画されている強制移送のコストは一人あたり約3090万円で、移送のほうが1000万円ほど高くなる。なぜ高いコストをかけてまで強制移送するのか。移民・難民問題に詳しい上智大学の岡部教授は「強制的な移送により不法入国を試みる人のモチベーションの抑止を狙っている。いまのコストよりも中長期での効果を見ているのではないか」と指摘する。不法移民を強制移送し、他国へ委託する動きはイギリスだけのことではない。デンマークも同様に難民申請者を同じルワンダに移送することを考えている。イタリアは不法移民を一次的に収容する施設をアルバニアにイタリアが資金を出してつくり、イタリアに上陸させずにアルバニアに送る計画を検討している。ドイツも不法移民を収容する施設をEU域外に設置する検討をしている。このように他国に“外部委託”する流れが進んでいる。
松山俊行キャスター(フジテレビ政治部長・解説委員):
欧州各国では自国に入ってきた不法入国者、不法移民を外国に“外部委託”する流れが出てきているが、この動きをどう見るか。
宮家邦彦氏(元外交官・内閣官房参与):
今までは(移民に)オープンだった欧州がもう背に腹はかえられなくなっている。ドイツは、メルケル首相時に相当寛容でおおらかに(移民を)受け入れた。その結果、ドイツ国内で何が起きたか。その反省もあり、おそらくこのような動きはこれからも増えることはあっても減ることはない。
松山キャスター:
6月に行われた欧州議会選挙では、EU加盟国の多くで移民に厳しい姿勢の極右勢力、右派勢力が台頭した。欧州というと、多様性や環境重視などが旗印になっていたが、かなりドラスチックに変わってきているのではないかという見方もある。
櫻井よしこ氏(国家基本問題研究所理事長):
総人口に対する移民のパーセンテージを見ると、ドイツが19、イギリスが14、フランスが13、イタリアも含めいずれも10%以上だ。10%を超える段階で社会の問題が顕在化してくる。財政的にもそうだ。統合しようとしても共生しようとしてもどちらもうまくいかず、社会の分断、いわゆるヘイトスピーチ、犯罪などいろいろなことが増えてくる。もうどうしようもなくなって、とにかく金を倍かけてもいいから、よそに行ってほしいということだ。日本は欧州の事例に学ぶべきだ。いま大きな潮流として、もう共生とかは無理なんだと、統合やりましょうと言ってもうまくいかない。イギリスならイギリス国民になってもらいましょう、フランスならフランス国民になってもらいましょうというが、それもうまくいっていない。増えすぎる移民に対してようやく現実を見始めた。優しい心で「受け入れましょう」というのは簡単だが、受け入れた結果が大変なのだということをこの事例は示している。これからも移民に対する、もしくは外国人労働者に対する政策は厳しくなると思う。
橋下徹氏(弁護士、元大阪府知事、元大阪市長):
僕もそう思う。EUの対応に対しては、「多様性」「外国人の共生」を声高に主張する人からすれば非常に問題だと思われるかもしれないが、現実問題としては、こうやらざるを得ない。右派でも左派でも政治問題について抽象的なスローガン、抽象的な主張はしても現実問題は解決できない。いま実際に大量の不法移民が入ってきて現実の問題が生じて、それに対し解決策を提示するのが、右派でも左派でも政治家の役割だ。
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。