世界平和サミットで発言するウクライナのゼレンスキー大統領=スイス中部ビュルゲンシュトックで6月15日、ロイター

 ロシアに侵攻されているウクライナの和平案を協議するスイスでの首脳級会合「世界平和サミット」は16日、2日間の日程を終え閉幕する。ウクライナのゼレンスキー大統領は15日の演説で、サミットに約100の国と機関が参加したことは「大きな成功だ」と強調し、国際社会の結束をアピールした。ただ、ウクライナや同国を支援する西側諸国と、ロシアや中国などとの溝は深く、和平交渉の早期実現は見通せない。

 ロイター通信が16日に報じた共同声明の草案では、露軍にウクライナ領からの全面撤退を求める内容は直接的には盛り込まれず、「ウクライナを含む全ての国の主権と領土の一体性」という国際法上の原則を確認するにとどめた。

 草案では、ロシアが占領するウクライナ南部ザポロジエ原発をウクライナの管理下に戻すこと▽食糧安全保障のための商用航路の安全確保▽全ての捕虜の交換と連れ去られた市民の帰還――も求めた。ウクライナは全会一致の採択を目指す。

 ゼレンスキー氏は今回のサミットについて「(国際社会の)分断という最悪の事態を避けることができた」と述べ、幅広い立場の参加者からウクライナへの支持を得ることができたとアピールした。ただ、フランスのマクロン大統領は「我々の取り組みに加わる国の輪をもっと広げていく」と語り、参加を見送った国々との対話の必要性を指摘した。

 小麦などの主要輸出国であるウクライナで続く戦争の影響で、深刻な食糧難に見舞われたアフリカなどの参加国からは「このサミットは重要な対話の場だ」(ガーナのアクフォアド大統領)と評価する声もあった。

 一方、プーチン露大統領は14日の演説で、改めて強硬姿勢を示した。一方的に自国領への併合を宣言したウクライナ東・南部4州全域からのウクライナ側の撤退や、北大西洋条約機構(NATO)への非加盟を求めるなど、降伏の要求にも近い内容だ。

 今回のサミットにロシアは招かれず、対露関係を深める中国も出席しなかった。「グローバルサウス」と呼ばれる新興・途上国の有力国のうち、インドは閣僚級の代表を派遣、ブラジルはオブザーバー参加という形を取った。和平の仲介に意欲を示してきたトルコとサウジアラビアからは外相が出席した。【ベルリン五十嵐朋子】

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