記者会見を開くイスラエルのガンツ前国防相=イスラエル中部ラマトガンで2024年6月9日、ロイター

 パレスチナ自治区ガザ地区での戦闘を巡り、イスラエルのガンツ前国防相は9日、戦時内閣から離脱すると発表した。ガンツ氏は先月、ガザでの戦闘終結後の統治計画をまとめ、承認することをネタニヤフ政権に求めていた。中道右派野党を率いるガンツ氏が戦時内閣から離脱しても、政権は国会の過半数を維持したままだが、政権運営の不安定化は避けられそうにない。

 ガンツ氏は、昨年10月のイスラム組織ハマスとの戦闘開始を受けて、戦闘の対応を議論する挙国一致の戦時内閣に参加。将来のガザ統治に関し、パレスチナやアラブ諸国、欧米からなる統治機構の創設などを含む6項目の目標を実現するための計画を今月8日までに示すよう要求したが、ネタニヤフ首相は応じなかった。

 国内では、支持率が低迷するネタニヤフ氏が政治生命存続のために戦闘を長引かせているとの批判がある。イスラエルメディアが先月、公表した世論調査では、ガンツ氏が「次の首相」にふさわしい人物として45%の支持を集め、35%のネタニヤフ氏をリードしている。

 ガンツ氏は、権力の存続よりも人質の解放を優先させたり、ハマスの壊滅とガザでの新たな統治主体を創設したりすることなどが戦争における「真の勝利」だと指摘。「ネタニヤフ氏は『真の勝利』への道を阻んでいる」と非難した。その上で、国民から信頼される政権樹立のため、早期の選挙の実施を求めた。

 これに対して、ネタニヤフ氏は「イスラエルは複数の前線で、存亡に関わる戦いの中にいる」と主張。「今はこの戦いを放棄する時ではない」と述べ、ガンツ氏に戦時内閣にとどまるように求めた。戦時内閣に加わっていない極右政党党首のベングビール国家治安相は、戦時内閣への参加を要求した。【エルサレム松岡大地】

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