大統領選で勝利し、演説するシェインバウム氏=メキシコ市で2024年6月3日、AP

 メキシコ大統領選が2日投開票され、左派与党「国家再生運動」のシェインバウム前メキシコ市長(61)が、中道右派政党などの野党連合、ガルベス上院議員(61)らを破って当選を確実にした。地元メディアが伝えた。

 「マチスモ」と呼ばれる男性優位主義の考え方が根強く残るメキシコで、女性として初めて大統領に選ばれた。

 1962年、ユダヤ系の技術者の父と細胞生物学者の母の間に首都メキシコ市で生まれた。両親は反政府運動に傾倒し、中道右派「制度的革命党(PRI)」の長期政権の抑圧に反発する知識人や政治家を支援していた。政治は身近な存在だった。

 メキシコ市の大学に入学後、PRIによる公教育の民営化に反対する学生運動に身を投じた。物理学を専攻し、95年にエネルギー工学の分野で博士号を取得した。

 現職のロペスオブラドール大統領(70)との出会いは2000年。同氏がメキシコ市長に就任した際、交通渋滞の解消などを目指す市環境局トップに任命された。その後、06年にロペスオブラドール氏が大統領選に立候補すると、広報担当に起用された。

 18年のメキシコ市長選で勝利し、初の女性市長に就任。在任中は殺人事件の発生率を5割減らすなど治安対策で称賛を浴びた。一方、21年に26人が死亡した鉄道高架橋の崩落事故で安全対策を怠ったとして非難を受けた。

 「女性が恐怖を感じることのない、暴力のない生活を実現する」。選挙戦最終日の5月29日、支持者を前にこう訴えた。

 メキシコでは女性議員を増やすことを目的とした選挙制度改革によって、国会議員の女性比率は5割近くに上昇した。一方、フェミサイド(女性殺し)は社会問題化しており、政府によると、毎日約10人の女性が殺害されている。性暴力も後を絶たない。女性の地位向上は大きな課題の一つだ。

 スペイン紙エルパイスによると、あだ名は「ラ・ドクトーラ」(スペイン語で博士)。米国留学経験があり、英語が堪能だ。元夫との間に娘が1人と義理の息子が1人。昨年、メキシコ中央銀行の幹部と再婚した。【ニューヨーク中村聡也】

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