一時はウクライナも使用していたアメリカ製バイラクタルTB2(2021年8月18日、キーウ) REUTERS/Gleb Garanich
<開戦当初に初回の供与を受けて以降、ウクライナ軍はしだいにアメリカ製ドローンではなく中国製ドローンを使うようになった。値段が高いのも理由の一つだが、ウクライナでの戦争には使えなかったのだ>
ウクライナはロシア軍との戦いで、ドローン(無人機)に大きく依存してきた。だが今後ウクライナが使用するドローンの多くはアメリカ製ではなくなるだろう。アメリカ製ドローンは価格が高すぎるからだ。だがそれだけではない。
【画像・動画】ウクライナ人の叡智を詰め込んだ国産ドローンたち
ウクライナ戦争におけるアメリカ製ドローンの問題点については、米メディアが最近、詳しく取り上げ始めた。ウクライナにとってはあまりに高価な上、ロシア軍との戦いでは大して役に立たないと、4月11日付のウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が伝えた。
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が2022年2月に始めた戦争では、ロシア、ウクライナ双方にとって、ドローンは価値ある兵器となっている。ウクライナ軍の巧みなドローン攻撃で、クリミア半島ではロシアが守勢に立たされたと、軍事アナリストは評価。驚くことに、ウクライナが飛ばしたドローンは国境から遠く離れたロシアの首都モスクワにも到達している。
だが開戦当初に最初の供与分がアメリカからが送られた後、ウクライナはしだいに中国製ドローンを使用するようになった。ウクライナがロシアの親密な盟友である中国から購入しているのは部品だけではない。ウクライナ政府は中国から「ドローン本体を大量に調達するルートを見いだした」と、WSJは報じている。
米国防総省も問題を認識
中国製を使うのは、「アメリカ製の商用ドローンは中国製のそれに比べ、何万ドルも高くつく」からだと、WSJは説明している。なにしろウクライナ軍が使用するドローンは、毎月ざっと1万機にも上る。
ウクライナのドローン計画を管轄するDX省のゲオルギ・ドゥビンスキー副大臣はアメリカ製ドローンをもっと試したいのはやまやまだが、われわれは「コスト効率のよい解決策を探っている」とWSJに話している。
価格もさることながら、アメリカ製ドローンはロシア軍に探知されやすい。また「誤作動が起きやすく、修理が難しい」こともあり、安価でも戦場で使える中国製に軍配が上がると、WSJは解説している。
「アメリカ製ドローンはどのクラスも、ほかの兵器システムほど性能がよくないと、一般的に見られている」と、ウクライナにドローンを提供しているシリコンバレーの企業・スカイディオの幹部はWSJに語っている。
この問題に関する本誌の問い合わせに対し、米国務省の報道官は、われわれは「ウクライナのパートナーが現在の戦闘環境において、とりわけ電子戦におけるロシアの高度な戦闘能力に対して、ドローンを使用する際に直面している困難な問題は重々承知している」と、文書で回答した。
国防総省は、「こうした問題に対処し、できる限り効率的かつ信頼性が高く、修理しやすいドローンを提供するため、防衛産業の協力企業及びウクライナ国防省と綿密に検討を重ねている」という。
文書はさらに以下のように述べている。
「国防総省は現代の戦闘及び電子戦の戦闘環境の厳しい要求に応え得る技術を特定・開発し実戦配備すべく、防衛産業との連携を強化し、ロシアの侵攻に対し、ウクライナの主権と領土の一体性を支えるため、可能な限り最善の複合的な戦闘能力を提供することに全力を尽くしている(中略)特定の作戦の詳細には言及できないが、われわれは同盟軍に提供するシステムを継続的に検証・改善し、作戦環境からの貴重なフィードバックを取り入れて、わが軍の戦闘能力を絶えず改善・刷新するよう努めている」
防衛関連情報サイト「特殊作戦部隊レポート(SOFREP)」のガイ・マッカードル編集主幹は本誌に対し、アメリカ製ドローンが中国製より高価なのは「間違いない」が、「リンゴとオレンジのように違う物を比べても意味がない」と語った。
「アメリカ製ドローンの多くは、驚くほど洗練された高度な性能を誇るが、戦場では時たま思わぬバグが出ることもあるだろう。だからこそ戦闘用のハードやソフトは絶えず更新され、磨かれなければならないのだ」と、マッカードルは言う。「安価な中国製ドローンはまさに安さが売りで、どんどん量産され、この戦争ではウクライナにもロシアに売却されている」
年間100万台を優に突破か
こうしたなか、ウクライナは同盟国頼みのドローン調達から脱出しようと、国産ドローンの増産を推進。機体に搭載されたカメラの映像を見ながら操縦できる一人称視点(FPV)ドローンや、無人艇──いわゆる「水中ドローン」の国産化も達成している。
マッカードルによると、ウクライナ製ドローンは、アメリカ製と中国製の「中間辺り」のグレードだという。
「スカイナイト、シャーク、レイバード3など、ウクライナの国産ドローンはたいがい、ホビーのドローン市場で出回っているような部品を使っていて、組立と操縦の手軽さを重視しているようだ」と、彼は話す。「これらのドローンは偵察用、標的用、小型爆弾搭載用など、用途に特化した設計になっていて......コストを大幅に抑えられる」
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は昨年12月末の記者会見で、2024年には国産ドローンの生産台数を100万台の大台に乗せたいと語った。
ウクライナ戦略産業省のハンナ・ホプコー副大臣は今年3月、早めにこの目標を達成できそうだと見通しを語った。ウクライナのテレビに出演し、今では月産15万台の生産が可能だと発言したのだ。「既に年間100万台の目標を優に上回る生産体制が整っている」
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。