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 ロシアのウクライナ侵攻を受け欧米などが凍結した露中央銀行の資産を巡り、米国がこの資産の運用益を担保に500億ドル(約7・8兆円)規模の資金をウクライナ支援に充てる案を主要7カ国(G7)に提案している。23~25日にイタリア北部ストレーザで開かれるG7財務相・中央銀行総裁会議で議論される見通しだ。

 ロシアの凍結資産は総額約3000億ドルで、このうち3分の2は欧州にある。欧州連合(EU)加盟国で構成する欧州理事会は21日、国際法上の問題が生じないよう、凍結資産の元本には手をつけず、その運用益をウクライナ支援に充てることで正式に合意した。

 ただ、この運用益は年30億ドル強でウクライナ支援には不十分。そこで米国が提案したのが、将来の運用益をテコに約500億ドルの資金を前倒しで工面する手法だ。米メディアによると、運用益を担保に欧米などG7各国がウクライナに融資したり、運用益を裏付けにした債券を発行したりする案が議論されている。

 イエレン米財務長官は21日、英メディアのインタビューに「ロシアに帰属しない利息収入を前倒しするものだ。まさに(G7で)議論しているところだ」と述べ、実現に意欲を見せた。

 米国はもともと凍結資産を没収しウクライナ支援に充てるべきだと強硬論を唱えていた。4月下旬には、米国内の凍結資産を差し押さえる権限を大統領に与える法律も成立させている。

 だが、凍結資産の没収は国際法違反の可能性が高いうえに、ロシアの報復を招く恐れがある。特にウクライナ危機前にロシアと関係が深かった欧州各国は、米国と違って多くの企業がロシア国内に資産を保有している。これらがロシアによる報復措置で差し押さえられかねないとの懸念もあり、EUはウクライナ支援と報復リスクとの兼ね合いで慎重に議論を重ねていた。

 米国も単独での凍結資産の差し押さえや没収には消極的だった。それらを実行すれば「中国が有事の差し押さえリスクを恐れて米国債を手放すなど、ドル建て金融システムを揺るがす恐れがある」(米シンクタンク)ためで、G7などで幅広く合意を得られる手法を模索していた。

 ブルームバーグ通信によると、独仏の当局は22日までに米国案を支持する考えを示した。ただ、実行には詳細の詰めが必要で、G7財務相・中銀総裁会議では合意できない可能性が高いという。【ワシントン大久保渉】

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