性の多様性を象徴する虹色の旗。ソウルクィアパレードで掲げられた=ソウルで2023年7月1日、日下部元美撮影

 韓国・ソウルで6月1日に開催されるLGBTQなど性的少数者の権利を訴える「ソウルクィアパレード」を巡って、市内の広場や公共施設の使用を不許可とする決定が相次いでいる。昨年と同様の事態で、その背景には韓国の保守派の強い反発があるとみられる。

 ソウルクィアパレードは2000年に始まり、15年以降は基本的に市中心部のソウル広場をメイン会場にしてきた。しかし、昨年は初めて広場の使用を許可されず、会場を繁華街に変更して開催。約3万5000人が参加した。

 主催団体の組織委員会は今年3月、今回のパレードのためにソウル広場の使用を申請した。だが、民間人と市議、公務員でつくる「開かれた広場運営市民委員会」は、同じ日に市のイベントが広場で実施予定として、2年連続で不許可にした。

 組織委は、関連行事のために市の複数の施設についても使用を申請したが、いずれも不許可になった。「社会的対立が憂慮される」などの理由を説明されたという。

記者会見するソウルクィアパレードの梁瑄友(ヤン・ソンウ)組織委員長=ソウルで5月20日、日下部元美撮影

 梁瑄友(ヤン・ソンウ)組織委員長は5月20日、ソウル外信記者クラブでの記者会見で「ソウル市はヘイト行動をする勢力を防ぐべきであり、役割を果たさないなら市もヘイト勢力と同じだ」と強く批判。一連の対応は「差別だ」と訴え、国家人権委員会に陳情中という。

 今年のパレードは、市内の繁華街・明洞(ミョンドン)近くに場所を変更して開催する予定だ。

 韓国では、性的少数者の権利推進に対して、保守系のキリスト教団体などが激しく反発し、社会でも批判的な層は根強い。

 昨年のパレードを巡るソウル広場の使用申請では、保守系キリスト教団体が同じ日に別のイベントを申請し、こちらが許可された。

 梁氏は一連の不許可について「社会的対立などを理由にしているが、これは弱者に対する一方的な暴力だ」と会見で強調。今年のパレードのスローガンは「YES、クィア!」だとして、「不許可にしても私たちの存在が消えるわけではない。このスローガンがここまで切実性を持つとは予想していなかった」と述べた。【ソウル日下部元美】

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