イランのライシ大統領がヘリコプター事故で急死したことが今後のイランの動向に与える影響について、日本エネルギー経済研究所中東研究センターの坂梨祥副センター長に聞いた。
イランでは国の方針を最高指導者が決め、大統領が方針の枠内で政策を進めている。イランはライシ大統領を突然失ったが、最高指導者ハメネイ師が健在である限り、国内がパニックに陥ることはないだろう。一方でライシ師がハメネイ師の最有力の後継候補と目されていただけに、後継者探しは振り出しに戻ったと言える。
ハメネイ師はこれまで、ライシ師を検事総長や司法府代表などの重要ポストに任命し、時間をかけて育ててきた経緯がある。2021年の大統領選では、国民の直接選挙によってライシ師が選ばれ、名実ともにハメネイ師の後継者にふさわしい形が整えられてきた。
ライシ師以外にもたびたび名前の挙がる人物はいるが、公職についた経験がないなど、適任が見あたらない状況だ。ハメネイ師は84歳と高齢で、これから後継者を育てていくには時間はあまり残されておらず、状況は混沌(こんとん)としている。
報道によると、ヘリの墜落はイランへの経済制裁が影響した可能性もある。ヘリは1979年のイスラム革命前に輸入された米国製とされる。非常に古い機体のうえ、制裁の影響で機材の更新が不十分だった可能性も否定できない。
今後、イランでは大統領選出に向けた手続きが進められていくが、新大統領の誕生で外交、経済政策などが大転換することは考えにくい。当面の関心事は、最高指導者を誰が継ぐのかという問題で、体制の安定性を保ちつつも、指導部内ではし烈な権力闘争が繰り広げられていくだろう。【聞き手・松本紫帆】
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。