軍事訓練を視察する金正恩朝鮮労働党総書記(手前左)=2024年3月7日、朝鮮中央通信・朝鮮通信・AP

 韓国の文在寅(ムン・ジェイン)前大統領が今月発売の回顧録で、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記と2018年9月に平壌で会談した際、正恩氏が韓国・済州島(チェジュド)にある「漢拏(ハルラ)山」(標高1947メートル)に行きたいと述べたと明らかにした。

 正恩氏の母方の祖父は済州島出身。祖父は第二次世界大戦前、大阪に移住し、正恩氏の母の高英姫(コ・ヨンヒ)氏は大阪で生まれた。一家は戦後、北朝鮮に渡り、正恩氏は金正日(キム・ジョンイル)氏と高氏の間に生まれた。

 両首脳は18年の会談で、同年中の正恩氏の訪韓で合意。この際、北朝鮮で革命の聖地とされる「白頭(ペクトゥ)山」に共に登った。両首脳による韓国最高峰・漢拏山への登山が実現していれば、南北の和解を象徴する出来事となるはずだった。だが、19年2月のトランプ米大統領(当時)と正恩氏との米朝首脳会談が合意なしに終わったことで南北関係も悪化し、訪韓は実現しなかった。

 回顧録によると、文政権は18年の会談後、正恩氏を漢拏山に迎えるために準備を進めていたという。文氏は「(正恩氏の)体力のため、漢拏山の登山は不可能だ」と考えたと回想した。山頂近くにヘリコプターを着陸させるため、臨時ヘリポートの建設も検討したという。

 また正恩氏は18年の南北首脳会談で「いつか延坪島(ヨンピョンド)を訪問し、砲撃で被災した住民を慰めたい」とも述べたという。同島では10年11月、北朝鮮軍による砲撃があり、韓国人4人が死亡した。【ソウル福岡静哉】

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