米司法省の庁舎=2024年2月14日、秋山信一撮影

 米連邦大陪審は、海外にいる北朝鮮のIT労働者が米国人になりすまして米国企業で働くのを手助けしたとして、西部アリゾナ州の米国人女性(49)を詐欺の共謀などの罪で連邦地裁に起訴した。司法省が16日発表した。女性はビジネス向けSNS「リンクトイン」で「弊社の米国での顔になりませんか」と勧誘され、2020年10月から約3年間で少なくとも680万ドル(約10億6000万円)の不法収益を得るのを助けていた。

 起訴状によると、北朝鮮のIT労働者らは60人以上の米国人のID情報を、盗んだり名義を借りたりして入手。米国人を装って有名企業からIT業務を請け負っていた。女性は労働者が企業のシステムにアクセスできるようにするため、企業から支給されたパソコンを自宅に郵送させ、毎日システムにログインして、労働者が海外から遠隔操作するのを手助けしていた。

 女性は労働者のID確認の手続きや報酬の中国への送金も手伝い、月最高1万2500ドル(約195万円)程度の手数料を受け取っていた。司法当局は23年10月に女性の自宅を捜索した際、90台以上のパソコンを押収。労働者の勤務先には、テレビ局、航空宇宙関連企業、自動車メーカーなど全米トップ500にランクされる大企業が多数含まれ、一部の企業からは内部情報を盗んでいた。

 米国務省は、IT労働者が稼いだ資金は北朝鮮の大量破壊兵器開発に使用された可能性が高いとみて、こうした資金調達システムの摘発につながる情報に最高500万ドルの報奨金をかけている。【ワシントン秋山信一】

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