大部分のイスラエル軍が撤収したガザ南部=ハンユニスで2024年4月7日、ロイター

 イスラエル軍は7日、イスラム組織ハマスとの戦闘が続くパレスチナ自治区南部から、1旅団を残して部隊を撤収させたと明らかにした。ガラント国防相は最南部ラファへの侵攻を含めた「今後の作戦に備えるため」と戦闘継続を強調するものの、一部ではハマスとの人質解放交渉に向けた地ならしとの見方もある。

 ロイター通信は目撃者の話として、ガザ南部ハンユニスの中心部からイスラエル軍が撤収していると報じた。カービー米大統領補佐官は7日、米ABCテレビに対し、撤収は「休養と補給のため」との見方を示した。イスラエル軍は以前、ガザ北部でも大規模な戦闘が終わったとして多くの部隊を引き揚げている。

 イスラエルは「ハマスの壊滅」を掲げて徹底攻撃の構えを崩しておらず、国民の多くも戦闘継続を支持している。大きな目標とするハマス最高幹部らの殺害や身柄拘束も実現できていない。

 ただハマスは拉致・拘束している100人近い人質の解放の条件として、イスラエル軍の撤退を主張している。イスラエル国内でも連日、早期の人質解放を求める抗議デモが行われており、部隊撤収は人質解放交渉の進展を狙った動きの可能性もある。

 一方、エジプトメディアは、7日にカイロで再開した停戦や人質解放を巡る交渉について「進展があった」と報道した。仲介役のカタールとハマスの代表団はカイロを出発したが、最終条件の合意のため、2日以内に再び戻るという。

 ただイスラエルメディアによると、イスラエル高官は「溝はいまだに大きい」と発言。ロイターによるとハマス幹部も「交渉で新しいことは何もない」と進展を否定している。昨年11月下旬の一時休戦以降、再度の休戦に向けた交渉は度々失敗しており、今回も実現するかは不透明だ。

 ガザでは人道状況が極端に悪化しており、イスラエルの対応に対する国際社会からの批判の声が高まっている。

 1日には食料支援団体「ワールド・セントラル・キッチン」(WCK)の外国人スタッフら7人がイスラエル軍の空爆で殺害された。イスラエル軍は誤爆と認める内部調査結果を公表したものの、被害者の中に自国民が含まれていたオーストラリアのアルバニージー首相は8日、「これまでの説明には納得がいかない」とイスラエルを批判した。【エルサレム松岡大地】

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