プーチン大統領は9日、対独戦勝記念日の軍事パレードで演説し、「大祖国戦争に参加した退役軍人の記憶を大切にしながら、頭を下げます。ネオナチによる野蛮な砲撃とテロ攻撃で亡くなった民間人、そしてネオナチとの戦いとロシアのための正義の戦いで倒れた戦友たちを追悼します」と述べた。首都モスクワにある「赤の広場」で開催された軍事パレードには、9000人超の軍人が参加し、核弾頭搭載可能な短距離弾道ミサイル「イスカンデル」、核兵器を複数搭載可能な多弾頭の大陸間弾道ミサイル「ヤルス」などが公開された。

米シンクタンク・戦争研究所によると、イラン、北朝鮮、中国の代表は、プーチン大統領とともに壇上に登ることはなかった。西側諸国からは出席が見送られた。2005年に行われた第60回の戦勝記念日の式典では当時、日本の小泉純一郎総理をはじめ、ブッシュ米大統領、シラク仏大統領など西側諸国の首脳が出席していた。7日に行われた大統領就任式で、プーチン氏は、「国内の不安やトラブルのために払った莫大な代償を決して忘れてはならない。国家と社会政治システムはいかなる脅威や挑戦に対しても強く抵抗力を持ち、進歩的で安定した発展を保証しなければならない」と訴えた。

プーチン氏は2000年に大統領に就任し、首相時代を含め24年間にわたりロシアの統治にあたった。プーチン氏は憲法を改正しており、さらに12年間、83歳まで続投が可能となった。米トランプ政権で国家安全保障会議の欧州・ロシア担当首席顧問を務めたフィオナ・ヒル氏は8日、英BBCの取材に対して、「プーチン氏は自分のことをロシアのツァーリ(皇帝)、『ウラジーミル大帝』だと思っている」と述べた。また、米カーネギー国際平和基金の上級フェローのアンドレイ・コレスニコフ氏は、「プーチン主義はスターリン主義の再来。プーチン氏の権力は、スターリン時代と同様に、プーチン氏個人に集中している。プーチン氏は一生、権力を維持するための準備をしている」と独裁者スターリンとプーチン氏の類似性を指摘する。5期目に突入したプーチン氏への崇拝が加速している。プーチン氏の5期目の就任式に出席したトルストイ議員は、「プーチン氏はロシアを勝利に導いている」と語り、また、ヴォロージン下院議長は、「プーチン氏がいればロシアがあり、プーチン氏がいなければ、ロシアはない。西側諸国はいずれ崩壊する」と述べた。

ウクライナ国防省は10日、ロシア軍の装甲車両がロシア国境付近にあるハルキウ州の防衛線の突破を試みたことを明らかにした。米CNNによると、同州クラスネ村に向かったロシア軍の攻撃は、4個大隊の約2000人が実施した。ロシア軍は、国境の町・ボルチャンスクへ向け約1キロ侵入した。ロシア軍はハルキウ州の4集落を制圧した。ロシア軍の目的は、国境から約10キロの深さまで入り、ロシア領に戦争の影響が及ばないよう、国境緩衝地帯を構築することとする見方も伝えられる。周辺一帯を防御するために、ウクライナ軍は予備部隊を投入した。アメリカ国家安全保障会議のカービー戦略広報調整官は10日、ハルキウなどで、ロシア軍が大規模攻撃に向けて準備している可能性があると指摘したうえで、「ロシア軍が今後、数週間でさらに前進する可能性がある」と危機感を表明した。

★ゲスト:秋元千明(英国王立防衛安全保障研究所日本特別代表)、小泉悠(東大先端研准教授)
★アンカー:杉田弘毅(共同通信社特別編集委員)

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