Dmytro Smolienko/Ukrinform/Sipa USA via Reuters Connect
<散弾銃はローテクな兵器だが、ドローンに対する効果的な対抗手段であることはロシア軍だけでなく米軍も認識している>
頭上を飛ぶウクライナ軍のドローンに気付き、ライフル銃で必死に撃ち落とそうとするロシア軍の兵士。ようやく弾を命中させることに成功し、ドローンは地面に墜落して爆発する──しかし運が悪いことにドローンが墜落した場所には、木の陰に身を隠すように地面に伏せていた味方の兵士がおり、この兵士はもろに爆発に巻き込まれてしまう。
■【動画】閲覧注意:撃ち落としたドローンが、なんと味方兵に直撃する衝撃の瞬間 「散弾銃ならこんなことには...」
こんなショッキングな映像がSNSで拡散されたのは今年4月のこと。ウクライナの戦場で大きな脅威となっているドローンだが、その対処の難しさが改めて浮き彫りになったのだった。動画を投稿した人物は、「ショットガンが最高の対処法だと改めて証明された。標的に達する前に、空中で爆発させられる可能性があるからだ」とのコメントを添えている。
戦乱が長引くウクライナは、近未来的な最新兵器からソ連時代以前の旧型兵器まで、あらゆる兵器が総動員される戦場となっている。ウクライナが米国から新たに提供される最新鋭の兵器が到着するのを心待ちにするなかで、ロシアとの「兵器庫」の劇的なコントラストが浮き彫りになっている。
ウクライナは、米国議会で可決された対外援助策の一環として、待ち望んだF-16戦闘機が到着するのを待ちわびているところだ。一方のロシアは、戦場で前進しているとはいえ、地上部隊は18世紀さながらの課題に取り組んでいる。
間近に迫ったウクライナへのF-16の納入は、3年目に入った戦争の流れを変え得るものとして歓迎されている。数週間以内の到着が予定されているこの最新戦闘機は、ウクライナの消耗した航空部隊を強化し、ロシア軍に対して大きなアドバンテージをもたらすと目されている。
ウクライナ軍で訓練中のあるパイロットは、F-16の重要性について強調し、こう述べている。「F-16は強力で万能な戦闘機であり、われわれが空を制するために必要な優位性を与えてくれる」
F-16到着前の今も「空からの脅威」に脆弱なロシア軍
とはいえロシア軍は、F-16がまだ到着していない現時点でも、別の「空からの脅威」に対してますます脆弱になっている。それはウクライナが何万機も使用している、安価かつ機敏なドローンだ。
ウクライナのデジタル相ミハイロ・フェードロフは最近、ドローンの戦略的使用について強調し、ロシア領土により深く入り込むため、さらに数千機を製造する計画を明らかにした。ウクライナのドローンは、しばしば爆発物を装備しており、最大約20キロの距離から攻撃できるため、ロシア軍を悩ませる脅威となっている。
ドローンの脅威があまりに深刻なため、一部のロシア兵士は、この現代的な問題に対して、昔ながらの解決策を必死に求めている。散弾銃だ。
「ショットガンが必要なんだ!」
カメラに向かって、こう語り掛けるロシア兵士の動画が話題になっている。歩兵用の標準的な武器でドローンに立ち向かうことの難しさを語り、「散弾銃が必要だ。散弾銃が必要なんだ!」と訴える内容だ。「ドローンは、われわれにとって現実的な問題であり、効果的な撃墜方法を見つけるのに苦労している」
ほかのロシア兵士もソーシャルメディアで、連日のドローン攻撃に対抗するため、前線に散弾銃を送ってほしいと母国に懇願している。ある兵士はこう語る。「ドローンは、ひっきりなしにやって来る厄介な存在で、われわれには打つ手がなくなろうとしている。散弾銃は、地上戦の流れを変えてくれるはずだ」
散弾銃は簡単かつ安価、手軽なドローン対抗策
ドローンという現代的な兵器に比べ、散弾銃はローテクな兵器だが、ドローンに対する効果的な対抗手段であることは間違いない。散弾銃を使えば、低空飛行する鳥くらいの大きさのドローンの方向をおおまかに狙うだけで破壊することができる。
世界の紛争について報じる独立系メディア「ポピュラー・フロント」は最近、「ロシアは、より高度な防空システムの配備が遅れている一方で、ドローン問題への安価で手軽な対応策として散弾銃を採用している」と指摘している。
ウクライナも、ロシア軍ドローンに対する防衛手段として散弾銃を採用しているが、ロシアはドローンの供給量がはるかに少ないため、その頻度は低い。
そして、アメリカも同じようなことを考えている。米海兵隊は、対ドローン作戦における散弾銃の可能性を認めている。海兵隊第2低高度防空大隊は4月の訓練で、散弾銃で小型無人航空機システム(sUAS)と交戦する演習を行なった。
米連邦航空局(FAA)はsUASについて、重量約25キロ以下のドローンと定義している。ある海兵隊員はこう説明している。「とりわけ、従来の防空システムが有効でない都市環境では、散弾銃はドローンに対抗するための多用途で効果的なツールだ」
ロシア軍が散弾銃に頼ろうとしていることは、ソビエト連邦時代の兵器庫を持つロシアが、現代戦の進化する要求に対応するうえで直面している課題を浮き彫りにしている。しかしウクライナも、西側同盟国からの数十億ドル規模の援助を効果的な戦略に変えるうえで、独自の問題を抱えている。
F-16をウクライナに送ることを支持している軍事専門家でさえ、ウクライナが最新戦闘機部隊を統率・維持する能力については疑問を呈する。米空軍のクリステン・D・トンプソン大佐は3月に、次のように書いている。
「F-16は非常に高性能な戦闘機だが、効果的に運用するには、高度な訓練と支援が必要だ。ウクライナがこの戦闘機の能力を十分に引き出すには、兵站と技術の面で大きなハードルを乗り越える必要がある」
これらの問題が解決されれば、ウクライナに到来するF-16は、制空権の確保に不可欠な優位性をもたらす可能性がある。特にロシアが、ウクライナによる連日のドローン攻撃に対抗するため、前線の兵士に散弾銃を行き渡らせることにさえ苦労しているなかでは、その意味は大きい。
(翻訳:ガリレオ)
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