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<欧州とアジアに生息するダイススネークの一部は、通常の「擬死行動」よりさらに巧妙な「技」を使うことで効果を高めている>

ヘビの仲間には、捕食者に食べられるのを避けるため「死んだふり」をするものがいる。そうした中には、まさに「迫真」と言えるような巧妙な演技で相手を騙すヘビもいるのだが、このたび発表された論文では、口から血を流して死体そっくりに擬態するグロテスクな手口を使う種が紹介された。

■【写真】まさに迫真の表情! 舌を突き出し、口から血を流して「死んだふり」するダイススネーク

ダイススネークは、じっとしていることで死んだように見せかけるだけでなく、自身のふんを体に塗りつけたり、口から血を流したり、悪臭を放ったりする「技」まで駆使する。学術誌バイオロジー・レターズに掲載された新たな論文によれば、こうした手法を取るヘビは、体液を出さない種に比べて「死んだふり」をする時間が短くてすむという。

死んだふりは「擬死行動」とも呼ばれ、捕食者に食べられるのを避けるために様々な動物が用いる戦術だ。捕食者は生きている獲物を好むことが多く、すでに死んでいると思えば獲物を食べる可能性は低くなる。

捕食者が、追跡のスリルや狩猟本能を引き起こす動きに頼っている場合はなおさら効果は高い。また、死んだふりをすることで、捕食者が一瞬気を取られたり、「死体」を食べずに通り過ぎようとしたりすれば、逃げるチャンスができる。

舌を突き出して(死んだふりの)誇示行動をする

論文によると、欧州とアジアの一部に生息し、毒を持たないダイススネークは、死んだふりをする際、じっとしているだけのものもいれば、口から血をしみ出させたり、自分のふんを体に塗りつけたりもする。研究者がダイススネーク263匹を観察したところ、124匹がふんを塗りつけ、28匹が口から血を出した。

「捕獲されると、ヘビは激しくもがき、音を発しながら、悪臭を放ったりふんを体に塗りたくったりする。最終的には口を開けて舌を突き出して(死んだふりの)誇示行動をし、動かなくなる」と研究者らは述べる。また、死んだふりの際の反射出血として、「小さな血だまりができるか、(血が)口から滴り落ちる様子が観察された」という。

「(死んだふりの)直前や最中の様々な行動を観察したところ、そのいくつかが相乗的に働き、(死んだふりの)誇示行動全体を、捕食者をより思いとどまらせるものにすることで、捕食動物が学習した病気の獲物や死んだ獲物に対する嫌悪感を利用していると考えることができる」と研究者らは指摘する。

擬死行動は「合わせ技」がより効果的

血とふんを使ったヘビは、そうでないヘビに比べ、死んだふりをする時間が2秒少なく、これらの戦術が相乗効果を発揮していることを示唆している。

死んだふりの前に悪臭を放ち、ふんを塗りつけ、死んだふりの最中には反射出血をしたダイススネークは、「死んだふりの時間が有意に短かった」と研究者らは述べる。

「この研究結果は、捕食者と被食者との相互作用の様々な局面において、反捕食行動が機能的に統合していることを示しており、連続的な誇示行動を優先的に研究する必要性を強調している」

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