2年ぶりの記者会見に臨んだ韓国のユン・ソクヨル大統領 Reuters

<国民向け演説では低姿勢な態度も見せたが......>

韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は5月10日で就任2年を迎えるのに合わせ、9日ソウルの大統領室で国民向けの演説を行った後、記者会見を行った。ユン大統領がこのように報道陣の前に立って質疑応答を交わしたのは、2022年の就任100日目の記者会見以来631日ぶり2度目のことだ。

ユン大統領は、今後の国政運営やさまざまな課題について答えた。特に夫人のキム・ゴンヒ氏に関連するディオールバッグ贈賄疑惑や、輸入車ディーラー株価操作疑惑などをはじめ、物価安定および低出生問題対策などさまざまな課題について質疑が交わされた。国民日報、YTN、KBSなどの韓国メディアが報じた。

「妻の賢明といえない行動でご心配をかけたことに対し、謝罪申し上げる」


最近、大変ですよね?
春は深まる一方、生活の困難は簡単には解決できない。
心が重く、申し訳ないです。

22分ほどの国民向け演説の冒頭、ユン大統領はこのように切り出した。大統領就任からの2年間、国民生活の改善のため邁進したが、暮らしを変えるには力不足だったとして、今後3年間は国民の声にさらに耳を傾けると強調した。4月に行われた総選挙で与党が惨敗を喫したばかりだけに、国民と野党ともコミュニケーションをしていく姿勢を強調したのが目立った。

何より大きな変化は、演説後の報道陣との質疑応答で、夫人のキム・ゴンヒ氏に関する一連の疑惑について謝罪した点だ。

「私の妻の賢明とはいえない行動で国民にご心配をおかけしたことに対し、謝罪を申し上げます」

2月にKBSによる特別番組で単独インタビューに出演した際は「(バッグの贈り物を)断れなかった」として遺憾を表明したが、「謝罪」という表現を使ったのは今回が初めてのことだ。

また最近、専任捜査チームを設けた検察の捜査には誤解を招く恐れがあるとしてコメントすることを控えた。

「私が検察捜査に対してどんな立場を、または言及をすることがどんな影響を及ぼしかねない誤解が起きる恐れがあるので(中略)ただ、公正かつ厳正にうまくいくと思う」

こうした一方で、最近野党が要求している、政府から独立して活動する特別検察官によるキム・ゴンヒ氏への捜査についてはきっぱりと反対した。

「特別検察官(以下、特検)は検察、警察、高位公職者犯罪捜査処といった機関の捜査で手加減や手抜きが疑われる場合のもの。直ちに特検による捜査をするのは制度の趣旨と合わない」

特に、輸入車ディーラー「ドイツモータース」の株価操作疑惑については、ムン・ジェイン前政権下で当時検事総長だったユン大統領自身を「ターゲット」として2年半の間、激しく捜査したではないかと反問した。

「前政権で私と私の家族に対する『手加減捜査』をしたということなのか、不十分だったということなのか問わざるをえない。それ自体が矛盾だと考える。ある面ではただの政治攻勢、政治行為ではないか。そんな考えは今ももっています」

こうしたユン大統領の発言に対して、総選挙で大勝した野党側は反発を強めている。パク·チャンデ共に民主党院内代表は「ブランドバッグ、そして株価操作と関連した部分において、国民がその真相が何なのか知りたがっている。これを"政治攻勢"と片付けるのは不適切だと思われる」

特検導入を「政治攻勢」と位置づけたユン大統領の発言に野党が反発したことで、キム・ゴンヒ氏の疑惑をめぐる対立は今後も韓国政治でいつ問題が吹き出るか分からない最も敏感な時限爆弾として依然として残ることになったといえるだろう。

【動画】キム·ゴンヒ氏がディオールバッグを受け取った映像

2022年9月、キム·ゴンヒ氏が自分の運営するコバナコンテンツ事務所で在米韓国人のチェ·ジェヨン牧師に300万ウォン相当のクリスチャン·ディオールのレディー·ディオールWOCポーチを受け取った事件。隠し撮りによる撮影という点も議論を呼んだ映像だ。


 Voice of Seoul News / YouTube

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