空の旅に荷物紛失の不安は付きものだが? Maurizio Milanesio-shutterstock
<世界の大空港ではほとんどあり得ない記録、いかにして達成されたのか>
ある国際空港が、アメリカの空港にはほとんど不可能な偉業を達成している。開業から30年、乗客が預けた荷物をひとつも紛失していないのだ。
日本の関西国際空港は、港湾都市の大阪と、近隣の神戸ならびに京都を訪れる人を出迎えており、日本有数の忙しい空港でもある。開業したのは1994年9月で、その運営力と効率性がたびたび称えられてきた。しかし、同空港が数ある主要国際空港のなかでも飛び抜けているのは、その完璧な荷物取扱い実績だ。乗客の荷物の紛失や破損の申し立てに苦慮しているハブ空港は見習うべきだろう。
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だが、これさえやればいい、という秘訣があるわけではない。同空港を運営する関西エアポートの広報担当、高西健司は、本誌の取材でそう語っている。
関西国際空港は、飛行機が駐機してから15分以内に、乗客の最初の荷物をベルトコンベヤーに載せることを目標にしている。さらにその際は、スーツケース一つひとつの持ち手を外側に向けて、乗客が手に取りやすいようにしている、と高西は話す。
「手荷物が雨で濡れていれば、水をふき取ってから」乗客に返すそうだ。ベビーカーやスポーツ用品など特殊な手荷物は乗客に手渡しすることで、荷下ろし中に破損しないよう配慮している。
高西によると、関西国際空港は年間乗客数が最高3000万人、取扱う手荷物は年間1100万個にのぼる。この数字は、大阪・関西万博が開催される2025年には大幅に増えるとみられる。この国際博覧会は6カ月にわたって開催され、関西地区にはおよそ2800万人の来場者が押し寄せる見込みで、大規模な改修工事が行なわれている。
「世界中から多くの人が関西へとやってくるので、より丁寧で正確な業務遂行を目指します」と高西は言う。
「地盤沈下」との戦い
関西国際空港はこれまで、食の選択肢と従業員対応で、世界屈指の評価を受けてきた。航空サービス格付企業のスカイトラックスは、手荷物の取扱いについて関西国際空港を高く評価しており、今年を含めて8回も同部門1位に選出している。
その対極にある空港のひとつが、米ニューヨーク市のジョン・F・ケネディ国際空港だ。フォーブスは2023年、手荷物の紛失と破損の実績が米国内で最悪な空港として、ジョン・F・ケネディ国際空港を挙げている。
関西国際空港にも問題はある。とりわけ深刻なのは、この空港が驚くべきスピードで地盤沈下をしていることだ。関西国際空港は、大阪湾に浮かぶ2つの人工島の上に建設されており、開業当初は驚異的な工学技術だとされた。ところがそれ以降、空港は38フィート(約11.6メートル)沈下している。予想をはるかに上回る数字だ。そして、2050年ころにはさらに13フィート(約4メートル)沈下し、海面と同じ高さになると予想されている。
すでに台風の通過時に滑走路やターミナルが浸水したことがあり、迫りくる海から人工島を守るべく、多額を投じて強靭化が進められている。
(翻訳:ガリレオ)
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