米国のリズ・チェイニー元連邦下院議員=2022年12月19日、秋山信一撮影

 米連邦下院の共和党は17日、党内の反トランプ派の筆頭格であるリズ・チェイニー元連邦下院議員が2021年の連邦議会襲撃事件に関する調査時に「証人を不正に買収した」などとして、連邦捜査局(FBI)に捜査を要求した。トランプ次期米大統領も捜査を支持する考えを示し、25年1月の次期政権発足後にトランプ氏の「政敵」への捜査が始まるとの懸念が増している。

 下院管理委員会の監視小委員会の共和党議員らは23年1月以降、民主党主導で議会襲撃事件を調査した下院特別委員会の活動を検証していた。

 17日に公表した暫定報告書では、特別委の副委員長だったチェイニー氏が、事件時にメドウズ大統領首席補佐官の側近だったハッチンソン氏に弁護士がついているのを知りながら、直接連絡を取ったことなどを問題視。ハッチンソン氏を買収し、偽証させた疑いがあるなどとして、FBIの捜査を求めた。

 トランプ氏は18日、自身のソーシャルメディアへの投稿で「リズ・チェイニーは小委員会が入手した証拠に基づき、大きな問題に見舞われるだろう」と述べ、調査に携わった共和党議員に謝意を示した。トランプ氏は今月のNBCニュースのインタビューでも、チェイニー氏ら特別委のメンバーは「刑務所に行くべきだ」と発言。自身が捜査を命じることは否定したが、「司法長官やFBI長官が調査するだろう」と述べていた。

 一方、CNNによると、チェイニー氏は「暫定報告書は真実を意図的に無視して、トランプ氏がしたことをもみ消すためにうそをでっち上げた」と批判した。

 報告書によると、ハッチンソン氏は特別委の調査を受けた当初、トランプ氏側から紹介された弁護士をつけていた。しかし、2回の聴取を受けた後、反トランプ派と連絡を取り、弁護士の関知しないところで3回目の聴取に応じ、トランプ氏に不利な証言をした。

 調査後に発刊した著書では、チェイニー氏から紹介された弁護士に交代したことも明かしていた。一方、チェイニー氏は「弁護士をつけないつもりだと聞いたので、他の弁護士に相談することも可能だと伝えた」としている。

 ハッチンソン氏は特別委の公聴会にも出席。「トランプ氏が議会襲撃事件前、専用車の中で議会に向かうよう要求し、運転席に身を乗り出してハンドルを握ろうとしたと(トランプ氏の側近から)聞いた」などと証言して、メディアの注目を集めた。トランプ氏は当時、「作り話だ」と証言内容を否定していた。【ワシントン秋山信一】

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