ロシア国内の空港でウクライナが「放火」工作を実施(写真はドモジェドヴォ空港) Maxim Shemetov-Reuters
<ウクライナ国防省情報総局(GURMO)が、ロシアのKa32に「放火」をする動画を投稿し「破壊した」と発表>
ウクライナ国防省情報総局(GURMO)は4月末、ロシアの首都モスクワ郊外にあるオスタフィエボ空港でロシアの多目的ヘリコプターKa32が破壊されたと発表した。同情報総局がテレグラムの公式チャンネルに投稿した動画を見ると、何者かが夜の闇に紛れてKa32ヘリの機内に「放火」し、みるみるうちに炎が燃え広がっていく様子が捉えられている。
■【動画】ウクライナ情報機関、モスクワの空港で「放火」工作を展開...ヘリに火をつける「隠密行動」動画
動画にはヘリコプターのキャビン(客室)内に火が放たれた様子が映っているが、この火災でヘリがどの程度の損傷を受けたのかは明らかにされていない。情報総局は、このヘリは「黒焦げになった」としている。また同局は動画に、「破壊されたヘリコプターは、侵略国家であるロシアが軍の作戦を支援する目的で使用していたものだ」と説明を添えた。
情報総局はまた声明の中で、オスタフィエボ空港はロシアの国営天然ガス企業「ガスプロム」の傘下にある航空会社「ガスプロムアビア」が共同で運営しているとも説明した。ガスプロムもガスプロムアビアも、ロシアによるウクライナへの本格侵攻に関連してアメリカによる制裁の対象となっている。
ウクライナのメディア「MV」は情報総局関係者から得た情報を引用し、破壊されたヘリコプターはロシア国防省が所有していたものであり、物資輸送や戦闘員の撤退作戦などを行ってロシア軍を支援するのに使用されていたと報じた。
ロシア国内への越境攻撃は「避けられないプロセス」
ウクライナの情報機関はモスクワを含むロシア深部へのドローン攻撃や破壊工作に関与しており、今回の攻撃が事実と確認されれば彼らが関与した新たな攻撃ということになる。
ウクライナは特にこの数カ月、ロシアのエネルギー施設に対する攻撃を強化し、ロシア軍による効果的な作戦展開を妨害している。また一連の攻撃により、世界のエネルギー価格への影響を懸念する声も高まっている。
ウクライナの当局者らは、ロシア国内での攻撃について関与を認めることはあまりないが、ウクライナからの越境攻撃については繰り返し、自分たちにはその自由があると擁護してきた。アメリカをはじめとする国際社会は越境攻撃に反対を表明している。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は2023年夏にモスクワに対するドローン攻撃があった後、「戦争は徐々にロシアの領土、ロシアの象徴的な中心地や軍事基地に戻りつつある。これは避けられない自然な、そしてまったく公正なプロセスだ」と述べていた。
このような攻撃は過去1年の間に増加傾向を見せている。たとえば4月16日には、ウクライナ国防省情報総局がロシア東部にある爆撃機の製造工場へのドローン攻撃に関与したことを認めた。
空軍基地や飛行場を優先的に攻撃するウクライナ
また4月5日未明には、ウクライナとの国境から約96キロメートル離れたロシアのモロゾフスク空軍基地を標的とした攻撃が行われた。ここにはロシア軍がウクライナ国内の複数の前線で攻撃に使用してきたスホーイSu24とSu34などの戦略爆撃機が駐留していたという。
空軍基地や飛行場はウクライナ軍にとって優先的な「標的」となっている。2024年はじめには、ウクライナ空軍はクリミア半島の西端に位置する港湾都市セバストポリの近くにあるベルベク飛行場をミサイルで攻撃したと明らかにした。2022年8月には、クリミア西部にあるロシア軍のサキ空軍基地で複数の爆発が発生し、ロシア軍の戦闘機が多数損傷した。
ウクライナ軍は2024年に入ってからこれまでに、ロシア軍の多数のSu34戦闘爆撃機、Su35戦闘機と少なくとも1機のA50早期警戒管制機を破壊したと主張。2022年2月の戦争開始以降、これまでに撃墜したロシア軍の航空機は347機にのぼるとしている。
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