ウクライナ南部で破壊されたロシアのT-72戦車(2022年10月) Valentyn Ogirenko-Reuters
<ウクライナの自爆ドローン攻撃などにより、すでに約3000両の戦車を失ったとされるロシア軍は様々な兵器に「鳥かご装甲」を施している>
ロシア軍は、ウクライナ軍による執拗な自爆ドローン攻撃から自軍の戦車を守るため、一風変わった改造を施したようだ。インターネット上に出回っている動画からは、ロシア軍がウクライナの前線に展開する戦車を「カメの甲羅」のような金属性の構造物で覆い始めたことが見て取れる。
■【動画】新型兵器? ロシア軍、異形の「カメ型」戦車を最前線に配備 「ダース・ベイダーのヘルメットみたい」
ドローンによって撮影されたある動画には、カメの甲羅のような装甲で覆われたロシア軍の戦車らしきもの1両が、ドネツク州の集落クラスノホリフカ周辺を走行する様子が映っている。クラスノホリフカはウクライナ東部の前線にある集落で、ロシア軍が占領する(ドネツク州の州都)ドネツク市の西に位置している。
動画には「甲羅」のない戦車数台を率いて先頭を走る戦車の主砲の一部を覆っている金属製の殻が映っているように見える。ロシアのある軍事ブロガーは4月8日、動画に映っているのはロシア軍のT-72戦車だと述べた。
この動画が公開されると、インターネット上で大きな注目を集め、問題の戦車には冗談めかして「カメ戦車」や「ロシア軍の忍者カメ戦車」などの異名がつけられた。
ロシア軍はウクライナへの軍事侵攻を開始して以降、多くの戦車を失っている。英シンクタンク「国際戦略研究所」が今年に入ってから発表した推計によれば、ロシア軍が2022年2月以降に失った戦車の数は約3000両にのぼる。
「鳥かご装甲」と揶揄されている
戦車に施された追加装甲の写真に、ソーシャルメディアユーザーたちも困惑気味に反応。中世の包囲攻撃用兵器の画像や、ダース・ベイダーのヘルメットの画像を投稿した。
「カメの甲羅」は新たな設計だが、前例はある。ロシアはこれまでも、ウクライナ軍による攻撃から身を守るために、戦車に即席の装甲を取りつけてきた。ロシア軍のロケットランチャーにルーフスクリーンが取りつけられた例もある。
複数の報道によれば、ロシア軍は3月、海軍の艦船にも初めてこの戦術を導入した。
一連の追加装備は戦車などの貴重な軍事資産を狙った攻撃の衝撃を和らげるように設計されており、「コープケージ(鳥かご装甲)」と揶揄されている。
ウクライナ軍はロシア軍の戦車を重点的に狙って攻撃し、その破壊を成功させている。ウクライナ軍は大量のFPV(一人称視点)ドローンを投入してさまざまな標的を攻撃しており、自爆型のFPVドローンがロシア軍の装甲車に突っ込んでいく様子を捉えたとする動画を頻繁に公開している。
「カメの甲羅」戦車の詳細はまだ不明
ウクライナ国防省は4月はじめに「ロシア軍の戦車は、ウクライナ軍のFPVドローンの『お気に入りの標的』だ」と述べていた。
ロンドン大学キングズ・カレッジ戦争研究学部の研究員であるマリーナ・ミロンは、ロシア軍は(ロシアとウクライナの双方が飛来するドローンを迎撃するために広く使用している)電子戦システムでは全ての戦車を守ることができず、物理的な防御策に頼っていると指摘した。
ミロンは本誌に対して、このカメの甲羅のような追加装甲の詳細は明らかになっておらず、どれだけ多くの追加装甲が作られたのかや、ロシア軍が単に戦場で手に入る材料を有効活用しているだけなのかを把握するのは難しいと述べた。
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