韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は12日に発表した談話で、「非常戒厳」を宣布した際に選挙管理委員会庁舎にも部隊を送ったのは選管のシステムの管理態勢に問題があったためだと主張した。更に、4月の総選挙の結果についても「信頼できない」と発言。これに対し中央選管は「『不正選挙』との主張を強く糾弾する」と尹氏の主張を全面否定する声明を発表した。
不正選挙疑惑はこれまで、一部の保守派団体やユーチューバーが主張してきた。金龍顕(キム・ヨンヒョン)前国防相は選管への部隊投入について、「『不正選挙』の疑いに関する証拠を確保するためであり、尹氏の意思だった」と韓国紙の取材に明かしている。
尹氏は談話で、昨年、選管などに北朝鮮によるサイバー攻撃があったと指摘し、国家情報院(国情院)が調査を行おうとしたが、選管は憲法により設置された機関だとして調査を拒否したと説明。その後、国防省が一部のシステムを確認したが、「いくらでもハッキングによりデータ操作が可能」な状況だったと主張した。
更に「民主主義の核心である選挙を管理するシステムがでたらめで、どうやって国民が選挙結果を信頼できるのか」と批判。4月の総選挙で「問題点が改善されたかは分からない」と不正選挙を示唆した。
これに対し中央選管は、尹氏の発言は「事実と異なる誇張されたものだ」と反発した。点検ではシステムの一部に脆弱(ぜいじゃく)性が確認されたが、「北朝鮮がハッキングで選挙システムを侵害した痕跡は見つからなかった」と指摘した。
また、不正選挙を画策するのであれば、誰にも気づかれずに多数の内部協力者が情報をハッカーに提供し、いくつものシステムを機能不全にしなければならないと指摘。更に、操作したデータと合うように実物の投票用紙をすり替えなければならないことから、「事実上不可能なシナリオだ」と否定した。また、尹氏の主張は「自分が大統領に当選した選挙管理システムに対する自己否定と変わらない」と痛烈に批判した。【ソウル日下部元美】
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