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 韓国のトップアイドルグループ「NewJeans」が、所属事務所「ADOR(アドア)」との専属契約を解除すると発表した。日本でもNHK紅白歌合戦や、東京ドーム公演を行うなど活躍する人気アイドルだが、「信頼関係の破綻」を理由に契約解除を表明した。

【映像】「信頼関係は破綻」「契約維持は受け入れられない」と訴えるNewJeans・ミンジ

 発端は2024年4月、ADOR代表としてプロデュースを担ったミン・ヒジン氏が独立を画策したとして、親会社の「HYBE(ハイブ)」と対立して、その後に会社を去ったこと。ミン氏を慕っていたNewJeansと事務所側の関係に亀裂が入り、メンバーがミン氏の代表復帰などを受け入れないと契約解除すると通知したが、指定した期限内に要求が飲まれることはなかった。

 契約解除が現実となれば、違約金に加えて、「NewJeans」と名乗れなくなる可能性もある。一方の事務所にとっては、投資して“育てた”人材が簡単に独立するリスクがある。『ABEMA Prime』では、芸能事務所に所属することのメリット・デメリットを考えた。

■NewJeans騒動「いま韓国メディアでは“五分五分”に」

 ウェブサイト「韓国トレンド研究所」編集長で、ライターの吉崎エイジーニョ氏は、今回の騒動には「契約解除が可能かどうか」「解除の場合、違約金・名前の使用権はどうなるか」「韓国世論はどう向かっていくのか」「双方の“勝利”はどういうものになるのか」の4つのポイントがあると指摘する。

 吉崎氏は「解除までは可能」と見通している。「片方が精神的苦痛により『絶対に嫌だ』と言えば解除できるとの見方がある。14日間の猶予期間を与えて、改善策をADOR側に出した。その内容証明が解除に値しないとの説もあるが、僕は解除可能だと思う」。

 しかし違約金は「減額の可能性はあるが、免除は難しい」とし、また「グループ名の使用も壁が高い」という。「活動は法的にはできると思うが、韓国芸能界からのプレッシャーが相当かかる」と、先行きの不透明さを語った。

 韓国世論は「朝鮮日報の報道では“五分五分”になっている。4月の会見時にはミン・ヒジン氏寄りの論調だったが、いま韓国メディアでは半々。反対する人々は、会社経営の観点から『子会社社長やアーティストが親会社にたてつくと、会社組織が成立しない』と反感を覚えている」そうだ。

 韓国メディアでは契約解除をめぐり、「メンバーらが一緒に仕事ができないと言えば、解除を止めるのは難しいだろう」(11月26日付『朝鮮日報』、ヤン・テジョン弁護士)「(メンバーの主張は)解除事由となるのは難しい」(11月29日付『韓国日報』、ホ・ジュヨン弁護士)といったコメントを伝えている。また、違約金免除について、「契約解除訴訟で勝っても負けても違約金を支払う判例が多い」(11月26日付『朝鮮日報』、ソン・ヘミ弁護士)、グループ名の使用について、「契約書にグループ名を所有できる条項がなければ商標権を持っていくのは難しい」(11月30日付『韓国日報』、コ・サンロク弁護士)との見解も報じた。

 ミュージカル俳優として韓国芸能界で活躍したウ・ジウォン氏は、「事務所の立場からすると、NewJeansが契約解除できて、活動も続けられてしまうと、これからアーティストをどう育てるかの問題になる。契約を厳しくするなど、不安な事務所は多いだろう」と予想する。

 日韓の芸能事務所の違いは、「日本では“家族”のように育てられたが、韓国は“商品”としての気持ちが強い」だといい、「事務所も利益のためにアイドルを作る。“商品”のイメージが、もしNewJeansが勝てば変わる。アーティストとして応援している」と語った。

■違約金が600億円に?

 違約金は600億円以上になるとの推定もある。朝鮮日報が入手したADOR前代表らのメッセージのやりとりは、残りの契約期間(2029年7月31日まで)の推定売り上げから試算すると、違約金は4500〜6200億ウォン(日本円で480〜660億円)になるとの内容だった。

 この話題について、吉崎氏は「韓国では経済ニュースとして扱われてたが、コメンテーターが『ミンさんに投資する人はいるでしょ』とコメントしていた」と紹介。また、経済の専門家が「ミン・ヒジン氏が出資を受けて、違約金を払い、活動を続ける」との見解を示していたという。

 名称をめぐっては、「かつて『神話(シンファ)』というK-POPグループが解散後、別会社で別グループとして活動した後に、『神話』の商標を買った事例がある。裁判所の判断によっては、そうした取引の可能性もある」との見方を示した。

 なんもり法律事務所の南和行弁護士は、「日本の知財高裁が2023年12月、日本のロックバンドと事務所が、契約解除後の活動制限について争った裁判の判決を出した」と紹介する。「知財高裁は『契約は形式的にあるが、事務所による育成費用の回収と、活動を禁止することは結びつかない』と判断した」。

 これに吉崎氏は「神話の使用権も、韓国の裁判所が強制介入して、使えるようになった」と補足した。

■韓国芸能事務所に所属するメリットとデメリット

 大手事務所は育成システムにコストをかけている。韓国メディアによると、10代の練習生から衣食住の保障があり、レッスン代・美容代なども事務所が負担している。そして厳しい競争を経て、優秀な子を組み合わせデビューさせる。契約はデビューから7年間で、この間に投資を回収するとみられるが、コストは1人あたり年間1億ウォン(1000万円)以上とも言われる。

 事務所に所属するメリットはあるのか。吉崎氏は「音源の流通や、テレビ局との交渉といったサポートが受けられるため、入った方がいい。デビューまでにプロモーションや寮生活などで、約2000〜3000万円かかる。取り返せるかわからない中で投資されている」。

 コラムニストの小原ブラス氏は、デメリットとして「事務所に従わざるを得ない、契約にがんじがらめにされること」を挙げて、「日本では弁護士を付けたり、ファンからのプレゼントを管理したりする。最近では事務所側がイベントを主催して、企業に営業をかけ、タレントをアサインする手法もある。事務所に入らなくても活動できるが、入るメリットは十分にある」と指摘した。

 吉崎氏は「韓国の芸能界も、HYBE側も『前例を作っちゃいけない』と考えている。上場企業であるHYBEには株主からの目もあり、そのプレッシャーがかかっている」とした。

(『ABEMA Prime』より)

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