韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が非常戒厳を宣言し、戒厳司令部が一切の政治活動などを禁じるとしましたが、その後、宣言は解除されました。

なぜ今宣言したのか?そして、日本への影響について詳しく見ていきます。

木村拓也キャスター:
時系列で見ていきたいと思います。3日夜の10時半ごろでした。尹大統領が最大野党の「共に民主党」などを批判して、戒厳令、非常戒厳宣言を出しました。韓国の憲法で国家の非常事態に認められているもので、45年ぶりだということです。

午前0時ごろの街の映像を見ていきますと、国会前、深夜ですが大勢の人が集まっていて大声で「戒厳令を解除しろ」「尹錫悦を逮捕しろ」と、叫びながら抗議活動を行っています。

そして、装甲車が出ていて、軍人が市民を取り囲んでもみ合いとなる一触即発の事態となっていました。

国会内の映像もありますので見ていきましょう。
軍人が窓ガラスを割って、中に入っていく状況です。

中にいる人たちが、ソファでバリケードを作っていました。扉を封鎖して消火器を持っています。軍人が突撃していくんですが、消火器を噴射するというような応戦をして、騒然となる状況でした。

そして、時間が過ぎて午前1時ごろ、国会が解除要求を可決しました。これを受けて午前4時半ごろに、尹大統領が軍の撤収と戒厳令を解除を行ったということです。

青井実キャスター:
まさに緊迫の6時間でしたが、なぜ戒厳令を出したのか。今、支持率が20%を切るという、19%で厳しい状況ですけども、だとしても、この戒厳令をなぜ出した?

フジテレビ・立石修解説委員室長:
45年前の戒厳令は軍事政権下で行われたんですが今、韓国は成熟した民主主義の国なので状況が違うんですね。
今回、尹大統領は自分の権力を維持するために野党勢力を抑え込もうとして、戒厳令を出したと指摘されています。
しかし、これはやはり強権的な禁じ手で、なぜここに踏み切ったのか、いまいちよく分からない部分があります。

半島情勢に詳しい甲南女子大学の鴨下ひろみ准教授とも話したんですが、今回の戒厳令については政治的な自爆行為でもあると。乱心としか言えないということで、疑問が残ります。

青井実キャスター:
しかし、なぜこのタイミングだったのか、誰かと相談して決めたのか、その辺りどうみますか?

フジテレビ・立石修解説委員室長:
そういった形跡が見られないですよね。
尹大統領ですが、日本人にとっては親日家であまり悪いイメージはないと思うんですが、鴨下さんによると国内では「周囲の意見を聞かない」ですとか「空気を読まない」、つまり独善的な手法に周囲から反発の声も上がっていたと。そういう中で自分で決めたのではないかと考えられます。

今、妻のキム・ゴンヒさんにも収賄や、さまざまなスキャンダルが続出していて、公私ともに尹大統領は追い込まれた状況にもあった。
そういう中で冷静な判断ができたかどうかは疑問が残ります。

青井実キャスター:
尹政権になってシャトル外交が行われたり、いい方向になっていくと思ったんですが、来年、日韓国交正常化60年ということで、日本への影響はどのようなことが考えられますか?

フジテレビ・立石修解説委員室長:
最大野党である「共に民主党」という政党の代表は、尹大統領とは違って非常に厳しい対日姿勢をとっていると。仮に彼が大統領になった場合、歴史認識などを巡ってかつてのように日韓の溝が深まる可能性があります。また、安保の面でも日米韓の枠組みに影響が出る可能性もありますね。

宮司愛海キャスター:
韓国国内が混乱していると、隣の北朝鮮の動きもまた気になってきますけども。

フジテレビ・立石修解説委員室長:
尹大統領は対北朝鮮の強硬派でしたから、当然、金正恩(キム・ジョンウン)氏は今の尹大統領の失脚の可能性や混乱した状況を喜んで見ていると思います。混乱に乗じて、さまざまな動きに出てくる可能性がありますね。

青井実キャスター:
今回の一連の動きについて、どう見る?

SPキャスター パトリック・ハーラン氏:
話にあったとおり日米韓に対する影響も心配されますが、僕は45年前の軍事政権をしっかり覚えていますよ。ですから、今回の戒厳令にちょっとヒヤッとしたのは間違いないです。ただ、議会もすぐ動いて国民もすぐに出て阻止できたことに励ましにも感じますよね。すぐ独裁化はしない。今の韓国の民主主義の健全さや強さに、少し希望を持ちました。

青井実キャスター:
ただ、今、弾劾訴追案が出ている状況ですから、このあとどうなっていくのか注視していかなきゃいけないですね。

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