アフガニスタンで人道支援にあたる福岡市のNGO「ペシャワール会」の現地代表だった医師の中村哲さん(当時73歳)が2019年12月に武装集団の凶弾に倒れて4日で5年。会は中村さんの死後も現地での用水路建設や医療活動を続ける。同会の村上優(まさる)会長(75)は「大黒柱が亡くなり活動ができるか心配だったが、中村哲の精神は生きている」と話す。
アフガンでは21年にイスラム主義組織タリバンが復権。会によると、現地の実動組織「PMS(平和医療団・日本)」が活動する同国東部でも治安が安定し、日本人スタッフも長期滞在が可能になった。PMSは中村さんの死後、新たに3本の用水路の建設などに取り組み、約2万3800ヘクタールの耕作地で穀物や果樹などが実る。
村上会長は「5年たって軌道に乗っていると中村先生に報告したい。熟練した専門家が残り、人づくりがうまくいった」と語る。中村さんが考案した緑の大地計画やPMS独自の取水方式もアップデートしながら引き継いでいる。
中村さんは15年、新たな取水堰(しゅすいぜき)が完成した時にペシャワール会の会報にこう書いた。「水を扱う仕事は、決して『テロ対策』や『平和運動』ではなく、医療と同様、人間の生命を扱う仕事です。平和とは実体であり、観念の問題でない」
村上会長は「中村先生は『戦争反対』とデモをするよりも、人々がともに作業をしながら語り合えるようにしたかったのではないか。水路を造るプロセスでそれを確信していったんだろう」と振り返る。ロシアによるウクライナ侵攻やパレスチナ自治区ガザ地区での戦闘など戦乱が続く中、「こういう世の中になると、彼の言葉が響く」と話す。
現地での事業の継続には次世代へのバトンタッチも必要になる。「中村先生を知らない世代が中心になる時代が来る。彼の事業の神髄を伝えていかなければならない」【池田真由香】
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