内戦が続くシリアで反体制派が再び攻勢を強める中、アサド大統領は2日、後ろ盾であるイランのペゼシュキアン大統領と電話協議した。アサド氏は、反体制派が「北部に新たな国を作ろうとしている」と強い危機感を訴え、イラン側は支援の継続を表明した。
イラン大統領府によると、ペゼシュキアン氏は今回の攻勢について、敵対するイスラエルによる「企て」で、シリアを不安定化させようとしていると主張した。
一方、シリアの反体制派政治組織「シリア国民連合」トップのハディ・バハラ氏は2日、攻勢強化に関して、11月下旬にレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラとイスラエル軍の停戦合意が成立したことがきっかけだったと明らかにした。ロイター通信が伝えた。
アサド政権を支援するヒズボラがイスラエル軍と戦闘を続ける中で反体制派が蜂起すれば、イスラエルを間接的に支援することになることから、攻勢を遅らせたとみられる。
中東では昨年10月、パレスチナ自治区ガザ地区のイスラム組織ハマスとイスラエル軍の戦闘が始まり、ハマスと連帯するヒズボラもイスラエル軍との交戦を開始した。一方、2011年から続くシリア内戦では、ヒズボラやイランがアサド政権を支援してきた。
バハラ氏は反体制派が1年前から大規模攻勢の準備をしていたものの、「ガザとレバノンの戦闘が(作戦を)遅らせた」と説明。レバノンで11月27日に停戦が発効したのを「好機だととらえた」という。
反体制派は11月27日にアサド政権支配地域へ大規模攻勢を仕掛け、北部の主要都市アレッポの大部分を制圧した。在英民間団体「シリア人権観測所」によると、中部ハマ県でも衝突が起き、空爆も行われた。反体制派は無人機攻撃も実施し、政府軍に被害が出ているという。
ロイターによると、今回の戦闘激化を巡っては、イラクを拠点とする親イラン武装組織から300人超の戦闘員がアサド政権を支援するため、新たにシリア入りした。一方、ヒズボラはイスラエル軍との戦闘のため、10月半ばにシリアから部隊を引き揚げており、シリアへ改めて援軍を送る計画は今のところないという。イスラエル軍との交戦で消耗が激しいことが背景にあるとみられる。【カイロ金子淳】
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