米国のエマニュエル駐日大使(左)と握手する石破茂首相=首相官邸で2024年10月3日、平田明浩撮影

 米国のラーム・エマニュエル駐日大使は29日、帰任を前に米紙ワシントン・ポストへ寄稿し、「ソーシャルメディアは北京(中国政府)の悪意ある手法に光を当てるために重要なツールだった」と振り返った。エマニュエル氏はネット交流サービス(SNS)で中国政府を厳しく非難。対中関係の安定的な「管理」を重視するホワイトハウスから批判が出たとの報道もあったが、「思ったことを口にするタイプ」の自身にはSNSが合っていたと述べた。

 エマニュエル氏は寄稿で、中国に関して「習近平国家主席は2012年に、米中は『戦略的な競争相手』というよりも『戦略的な敵対相手』だと判断した。我々は中国政府の変化に気づくのが遅れたが、今は遅れを取り戻している」と説明した。

 駐日大使としての成果には、同盟関係や多国間連携の強化を挙げた。日米同盟については「長年、同盟の存在自体が十分な抑止力になると信じてきたが、22年以降は同盟を現代化し、インド太平洋地域の多国間連携の中心に位置づけてきた。日本は地域で非常に信頼されるリーダーやパートナーになった」と評価した。

 この地域の国際状況に関しては、「中国は自国が包囲されていると主張するが、中国の孤立は自ら作ったものだ。日本や韓国、フィリピン、オーストラリアなどインド太平洋の国々は、拡張主義的な野望を持つ中国が解き放たれることを望んでいない」と訴えた。

 その上で「米国が地域に関与することで、抑止力が増し、各国の主権が損なわれないように保障されるとの考えを明確に示している」と述べた。

 エマニュエル氏は日本で「目からうろこが落ちた」という経験もつづった。

 コーヒー店で席を確保するのに貴重品を置いたままにする客、皇居周辺を走る際に荷物をベンチに置いていくランナー、ランドセルを背負って歩いて登下校する子供たちを見たことを列挙。日本の社会的信頼の高さや治安の良さを称賛し、「米国の子供は無邪気さを奪われ、国民は安全上の懸念から多くの妥協をしている」と述べた。

 米国では政権交代に伴って主要国の大使は交代するのが一般的だ。25年1月に発足するトランプ次期政権の駐日大使候補はまだ発表されていない。【ワシントン秋山信一】

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