空襲警報を受け、首都キーウ(キエフ)の地下鉄の駅に避難する市民ら=ウクライナで2024年11月28日、ロイター

 ロシア軍は28日、ミサイルやドローン(無人機)でウクライナのインフラ施設などを攻撃し、ウクライナ各地で電力供給が停止するなど被害が拡大した。一時100万人以上が電力を失った。

 ウクライナ空軍によると、ロシア軍は28日、ミサイル91発とドローン97機で各地を攻撃。ウクライナ国内のエネルギー、燃料関連施設など12カ所が被害を受けた。ウクライナ軍はミサイル79発、ドローン35機を撃墜したとしている。

 ウクライナ政府によると、攻撃直後、一時国内全体で100万人以上が電力を失い、その後も数百万人が計画停電などで電力の使用を制限されている。

 西部リビウでは、52万3000人分の電力供給が停止した。ウクライナ全国で病院など重要施設への暖房や水の供給を確保するため、発電機などが使用されている。

 ゼレンスキー大統領は28日、ロシアが攻撃にクラスター弾を装着した巡航ミサイル「カリブル」を使用したと説明し、「卑劣なエスカレーションだ」とロシアを非難した。

 被害拡大の背景には、ウクライナの防空能力の限界があるとみられる。

 ウクライナ軍は今回、ロシアのミサイル91発のうち12発、ドローン97機のうち62機の迎撃に失敗した。ウクライナ軍はレーダーや赤外線探知機、音響装置、目視などでミサイル、ドローンを追尾しているが、ロシア軍は熱源を持つデコイ(おとり)や妨害電波を使用しており、防御が以前より困難になっているという。

 またロシアが今後使用する可能性がある極超音速中距離弾道ミサイル「オレシニク」に対する防御は困難を極める。

 ゼレンスキー氏は「今まさに防空システムが倉庫に眠るためではなく、命を守るために必要だ」と通信アプリ「テレグラム」に投稿し、西側支援国に防空兵器の速やかな供給を求めた。またウクライナ大統領府のイエルマク長官はテレグラムに「ロシアは冬季に向けインフラ攻撃用のミサイルを備蓄している」と投稿し、国民に警戒を呼び掛けた。【ブリュッセル宮川裕章】

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