デンマークの海域に停泊中の貨物船「伊鵬3」(11月20日) MIKKEL BERG PEDERSENーRITZAU SCANPIXーREUTERS

バルト海の海底で24時間に2本のインターネットケーブルが切断され、欧州各国政府は中国船の関与を疑っている。

まず11月17日、リトアニアとスウェーデンを結ぶ海底ケーブルが切断され、運用を停止。報道によれば、翌18日にはフィンランドとドイツを結ぶ別のケーブルも切断された。


スウェーデン、フィンランド、ドイツの当局は直ちに調査を開始。フィンランドとドイツの外相は共同声明で「海底ケーブル切断を深く懸念する」と述べ、「意図的損傷の疑いがある」と指摘した。

さらにドイツのピストリウス国防相は記者団にこう語った。「ケーブルが誤って切断されたとは誰も思わない。まだ確証はないが、破壊工作とみなければならない」

各国政府は現在、両ケーブルが損傷した際に近くにいた中国船籍の貨物船「伊鵬3」を注視している。「船舶追跡データによれば、伊鵬3は両海底ケーブル上の海域で減速・停止した。1つのケースでは、1時間以上その場に停泊していた」と、米ナショナル・パブリック・ラジオ(NPR)は報じた。

さらに疑いを濃厚なものにしているのが、この船が海底ケーブル上を横切る直前、バルト海に面したロシアの港に寄港していた事実だ。NATO当局は以前から、ロシアがウクライナとの戦争における「ハイブリッド戦」の一環として、ヨーロッパの通信インフラに損害を与えようとする可能性を警告していた。

伊鵬3は20日の時点でデンマーク海域に停泊中。同国海軍は監視活動を続けていることを確認した。報道によれば、伊鵬3に係官が乗船し、「スウェーデン、フィンランド、ドイツの当局者が乗組員の尋問のために到着するのを待っている」という。

今のところ中国側は多くを語っていない。この件について記者会見で質問された外務省の林剣(リン・チエン)報道官は、中国政府が「中国船舶に関連法規の厳守を求める」と述べた。また、「わが国はインフラの安全を重視する」とする一方、伊鵬3の航行権が尊重されることを期待すると強調した。


中国船がバルト海の海底ケーブル損傷に関与したのは今回が初めてではない。昨年10月に2本の海底ケーブルとフィンランドとスウェーデンをつなぐガスパイプラインが切断された際には、中国船籍のコンテナ船「新新北極熊」のいかりが原因だったことがその後の調査で判明。新新北極熊は当局の尋問を受けずに現場を離れ、ロシア経由で中国に戻った。

中国は独自調査の結果、新新北極熊に責任があると認めたが、偶発的な事故だと主張した。今回の件で伊鵬3の関与がはっきりすれば、このときの説明にもさらなる疑問の声が上がりそうだ。

インド太平洋地域でも、各国政府は海底ケーブルの脆弱性に警戒を強めている。海底ケーブルは大陸間デジタル通信のほぼ全てを担う存在だが、総延長は世界全体で140万キロ超。防衛は容易ではない。特に台湾では2023年に本島と馬祖列島を結ぶインターネットケーブルを中国船に切断されて以来、懸念が高まっている。

欧州各国政府は海底ケーブルを傷つけた犯人の特定に躍起になっている。こうした事例にしっかり対応しなければ、「敵対的な国々はますます大胆になる」と、リトアニアの国防相は警告した。


もし伊鵬3の「有罪」が確定すれば、既に脆弱な中国とEUの関係もさらに危ういものになる。

From thediplomat.com

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