中国南部の広東省で車が暴走し、35人が死亡した事件。無差別な殺傷事件が中国各地で相次いでいますが、背景にはなにがあるのでしょうか。

大勢の人々を次々となぎ倒していく1台の車。

撮影者
「(車が)たくさんの人をひいた。亡くなっている」

中国広東省・珠海市の体育施設の周辺でおととい、男が運転する車が運動をしていた大勢の市民を次々とはね、35人が死亡、43人が負傷しました。

「助けて、早く助けて」
「みんな運動していた高齢者だ。ランニングしてたんだよ」

当局は、車を運転していた62歳の男の身柄を拘束。ただ、男は拘束直前に自ら刃物で首のあたりを刺し、現在は意識不明で取り調べができない状態だということです。

事件から2日経った現場では、被害者を悼む市民らが献花に訪れていました。

市民
「とても悲しく、心が痛みます」
「被害にあったのは罪のない人ばかりです。事件を起こして、どんな意味があるのでしょう」

ただ、午後に現場を訪れると、当局が事態を大きくしたくないのか、手向けられた花などはすべて撤去されていました。一方、こんな動きも。

記者
「事件を受けて、市民が献血に訪れているということです」

献血した市民
「負傷者がたくさんいると聞いて、献血にきました。怖いです。なぜ、このようなことをしたかわからない。こんなに死傷者が出る事件になってしまって」

いったい、なぜ事件は起きたのか。中国では先月も、北京で男が刃物を振り回し、児童3人を含む5人がけがをするなど、ここ数か月、各地で無差別に人が襲われる事件が相次いでいます。

専門家は景気が悪化する中国で困窮する人が増えているなかで、次のような問題があると指摘します。

東京大学 阿古智子 教授
「問題があっても表現できないということも、人々が苦しい状況に置かれている原因に。はけ口がないというか、持っていく窓口がどこかわからないなかで過激な行動に走ってしまう」

今回の事件について、当局は、車を運転していた男は離婚後の財産分与をめぐって不満を募らせた可能性があると発表しています。

事件後、習近平国家主席は事件の真相を解明するとともに、犯人を厳しく処罰するよう「重要指示」を出すなど、事態の沈静化をはかっています。

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