長崎で原爆に遭いながら、国が定めた被爆地域外だったため被爆者と認められていない「被爆体験者」訴訟をめぐり、岸田文雄首相は21日、控訴する方針を明らかにした。あわせて「被爆体験者」について医療費の助成を被爆者と同程度まで拡充すると表明した。

  • 被爆体験者への医療費助成、大幅拡大へ 「被爆者と同等」の水準に

 首相公邸で長崎県の大石賢吾知事と長崎市の鈴木史朗市長と面会後、記者団に語った。

 被爆体験者44人が被爆者健康手帳の交付を求めて長崎県などを訴えた訴訟で、9日の長崎地裁判決は、国が定めた「被爆体験者」区域のうち東側の旧3村の一部に「黒い雨」が降ったと認定。この地域にいた15人を被爆者と認めた。

 被爆体験者をめぐる同様の訴訟では、2019年の最高裁で原告側の敗訴が確定。9日の地裁判決と証拠の評価が矛盾しているなどとして、控訴する必要性があると判断した。面会に同席した厚生労働相から長崎県知事らに、「控訴せざるを得ないという話があった」と明らかにした。

 一方、被爆体験者を対象に医療費の助成を被爆者と同程度まで拡充する方針も打ち出した。これまで必要だった毎年の精神科の診断を不要にする。岸田氏は「年内のできるだけ早い時期の医療費から助成を適用する」と述べた。厚生労働省によると、対象者は今年3月末時点で約6300人。

 岸田氏は8月に被爆体験者と面会した際、「合理的な解決」を指示していた。一方、9日の長崎地裁判決で国は一部敗訴。政府側は、国の主張は維持する一方で、より多くの被爆体験者の「救済」策検討に迫られていた。

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