トヨタ自動車の中嶋裕樹副社長(鴨川一也撮影)

トヨタ自動車の中嶋裕樹副社長は8日、認証不正を起こした子会社のダイハツ工業の新事業方針の発表を受けて記者団の取材に応じ、ダイハツに対するトヨタの今後のかかわり方について、一線を引いたドライな関係から、お互いに学んで強みを合わせるウエットな関係になっていくとの認識を示した。

OEMから開発委託に

トヨタとダイハツは5月から両社が連携する小型車事業の運営形態を変更し、ダイハツが主導権を持つOEM(相手先ブランドによる生産)供給から、トヨタが開発をダイハツに委託する形に変える。

中嶋氏はOEMは車両開発のすべての責任をOEM元(ダイハツ)が持つが、認証不正の再発防止の観点では「海外事業について残念ながら(ダイハツは)経験が少ない。(認証について)毎年のように法規が変わり、その法規の数と国の数、車両の数が掛け算となって、かなり膨大な負荷になっている」と指摘した。

その上で、認証不正に関する以前の記者会見で、認証業務にダイハツがどれだけの人材などの経営資源を割いているかを「(トヨタは)しっかりに確認できていなかったとおわび申し上げた。この点が(再発防止の)一番の大きな課題だ」とし、海外での認証にたけた人材もたくさんいる「トヨタが開発・認証に関して責任をとる形にする」と、委託方式への変更の狙いを説明した。

顧客の意見を反映した車づくり

ただ、開発の実務については「ダイハツは従前から小さな車、海外のプロジェクトに対しても顧客の意見を反映した車づくりにたけている。これはトヨタ以上だと思っている」と強調。今後については「ダイハツの強みはしっかりと生かして、ただし責任・企画をわれわれも一緒に勉強させていただいて、ある意味、ドライな関係だったOEM供給から、トヨタの強いところダイハツの強いところを合わせて商品を届けていく、ウエットな関係にもっとなっていこうという考えだ」と述べた。

小型車開発の委託に伴う人材交流などの組織連携については「さまざまな階層でトヨタもダイハツから学ぶことがたくさんある。トヨタからダイハツへ出向したり、ダイハツからトヨタへ出向したり。(人材交流は)以前からもやっていたが、OEM供給だとそこに線を引くという形だった。そうではなく、ウエットという言葉がいいかはわからないが、よりお互いが学び合うという姿勢で仕事をしていく」とした。

スズキとも得意分野で

また、トヨタが出資する軽自動車大手のスズキと、トヨタ、ダイハツの3社の今後の関係については、良品廉価の車を届けるということは共通認識だが、それぞれの得意な領域、地域があり、「3社でというよりスズキとトヨタ、ダイハツとトヨタがそれぞれの強みを生かして、どういう商品ができるかをそれぞれの会社と議論して進めていく」と述べる一方、3社で開発を予定していた軽の商用電気自動車(EV)は「(ダイハツの認証不正で)ストップしているが、再度スタートするか議論中。3社の強みを生かした展開ができるのではないかと期待している」とした。(池田昇)

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