仲松ミートはこれまで地域の商店、お弁当屋さんを中心に冷凍品総菜を販売してきましたが、創業から40年余りの間に大型スーパー、コンビニエンスストアの出店で何度も危機的な状況に陥りました。これまでの商売の仕方では生き残れない大きな転換期を迎えることになります。OEM受注を始め販路を開拓するも、コロナの脅威でさらに苦しい経験を味わい「このままではいけない」と自社の強みを生かす商品開発への思いが強くなりました。

 沖縄の食文化に欠かせない豚肉を使った保存食として伝承されてきた料理「ハンチュミ」は、繊維質の多い肩肉を泡盛、しょうゆ、砂糖、かつお節、ショウガで煮込み味付けします。かむほどに繊維がほぐれ、豊かな味わいを感じることができます。ただ、煮込みに時間や手間がかかる料理でもあります。

 私自身、見たことも食べたこともないハンチュミを知ったのは、航空会社が2011年に発行した機内誌でした。新商品への挑戦でそのことを思い出し、情報を集め試作を始めました。

 試作品をうるま市産業まつりに出店し、購入者からアンケートを重ね、材料の組み合わせや煮込み時間、泡盛の種類や度数などさまざまなパターンで試食を繰り返しました。うるま市の経営多角化支援事業補助金や専門家派遣を活用し、1年がかりでやっと製品化にたどり着きました。

 豚の肩肉は筋肉質で繊維が多く硬い肉です。繊維をほぐしながら味をゆっくり絡めていきます。味をしみ込ませ、半日煮込みながら適度な食感も残していくとショウガの風味、かつお節の香りのおいしいハンチュミが出来上がります。ご飯のお供、泡盛との相性も良く、島唐辛子を入れた辛口も作りました。専門家の支援でロゴマークの商標登録も行い、今思い返せばよくやったと自分や社員を褒めてあげたいと思います。

 今帰仁、国頭安波の道の駅、イオンライカム店のうるマルシェに並ぶハンチュミの瓶の中には、沖縄の食文化を守りたい仲松ミートの思いも詰まっています。

(仲松ミート執行役員)

次回は福島知加氏(ワダチラボ社長)です。

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