大阪・関西万博まで、まもなくあと半年。

大阪の街では、いま、万博の開催にあわせて「路上喫煙」を禁止すべく取り組みが進んでいます。

世界に誇れる健康な街づくりを目指す一方で、本当に実現できるのか?取材すると、課題も見えてきました。


■万博に向け急ピッチに進められる路上喫煙対策 「トラブルになること多い」と指導員

【記者リポート】「万博のシンボル大屋根のリングが一周ぐるっとつながっています」

半年後に迫った大阪・関西万博。
会場では連日、開幕に向けてパビリオンの建設作業が行われています。

一方、街の中でも万博に向け、急ピッチで進められていることが…、

【指導員】「危ないから。ここタバコあかんからね、火つけたらあかんよ」

路上喫煙対策です。

現在、大阪市では、天王寺駅付近のエリアや、御堂筋など6つのエリアで、路上喫煙を禁止する条例が定められていて、違反すると1000円の過料が科されます。

【喫煙者】「天王寺、久々に来たので、分からなかったです」(Q.肩身せまい?)「思いますね」

さらに、来年1月からは禁止エリアが市内全域に拡大します。

しかし、巡回の様子を取材していると、こんな場面も…。

【指導員】「1000円の過料いるんですよ。大阪の人?」
【違反者】「大阪。小銭も持ってない、全部ICカード。警察か?」
【指導員】「大阪市の職員です。もし吸わはんねんやったら、あそこ3カ所喫煙所ある。そこに書いてあるんでそちらの方で吸ってください」
【違反者】「ちょっと言いたいことある。路上喫煙は金取るのにな、路上で酒飲んでるやつは金取らへんのか?」
【指導員】「それは取れへん、条例がないから」
【違反者】「ふざけるな、つくれ!」

結局この男性は最後まで、「現金を持っていない」と主張し、過料を徴収することはできず…。

条例があるといっても、決して対策は簡単ではないようです。

【指導員】「(過料の支払いを)拒否されたり、トラブルになったことも多い。分かってる人も半分以上は、いると思います。すぐ出すということは」

■タバコの煙の到達範囲は14メートル 対策理由はタバコの健康被害をなくすこと

そもそも、なぜ大阪市は路上喫煙の禁止を進めているのでしょうか?

【大阪市 横山英幸市長】「万博でたくさんの人々が大阪にお越しになりますし、大阪もこれからどんどん世界都市になっていく。健康被害の問題等もありまして、全面の路上喫煙が決まっている」

実は、タバコの健康被害をなくすことは、思った以上に困難。

日本禁煙学会などによると、タバコの煙の到達範囲は14メートルともいわれ、風があるとさらに広範囲にわたるというのです。

専門家は、万博を控えた大阪は、対策のスピードを上げざるを得ないと指摘します。

【産業医科大学 大和浩教授】「WHO(世界保健機関)がメガイベントは禁煙で行うように指針を出している。ですから、万博・オリンピック・ワールドカップ、これらは受動喫煙対策をしっかりしてくださいという世界的な指令。とにかく受動喫煙をゼロにしなくてはならないとなってて」

■「全く足りてない雀の涙」喫煙所が足りないと不満の声 新設120ヵ所は適切?

そんな中で大阪市が急ピッチで進めるのが、喫煙所の設置。

補助金制度をつくるなどして、来年1月までに喫煙所120カ所の新設、さらに20カ所の改修を計画しています。

「タバコを吸える場所」をつくることで、路上喫煙を街からなくす作戦のようですが、市内の商店街を取材すると…。

【ひがし中通り商店会 小牟礼隆之理事】「間違いなく(喫煙所は)全く足りてないスズメの涙レベル。この街のお店のキャパ数に対して、ここだけではまずまかなえない」

聞こえてきたのは、計画への不満の声。

背景には、大阪市が決めた「必要な喫煙所の数」への疑念があります。

大阪市は、設置目標を決める際、定員が11人の喫煙所で、喫煙者が4分ごとに入れ替わり続けるケースを想定。
さらに、この状況が14時間続くと仮定したうえで、120カ所という目標を決定したのです。

一方で、お昼休みで人出が多くなる正午ごろ、商店街付近で取材をしていると、今はまだ喫煙禁止エリアではないということもあり、外でタバコを吸う人の姿が。

話を聞いてみると・・。

【喫煙所の外でタバコを吸っていた人】「(喫煙所は)人多かったので」「(周辺は喫煙所が)確かに少ないですね」

【喫煙所の外でタバコを吸っていた人】「喫煙所がないから隠しながら吸ってます」

実は、必要な喫煙所の数を367カ所だとする試算もあり、横山市長も就任前はこのように話していました。

【大阪市 横山英幸市長(就任前)】「色んなデータを見ていくと、300カ所以上の整備はメルクマール(指標)の1つになってくる」

この商店街の周辺では、新たに設置された喫煙所は1カ所のみ。

毎朝、店の前に捨てられたタバコの吸い殻を掃除しているという小牟礼さん。

喫煙所は足りておらず、市の取り組みがうまくいくとは思えないと話します。

【ひがし中通り商店会 小牟礼隆之理事】「どう対策したらいいのか分からない。向こう(市)が言うには『喫煙所を設置してください』だけ。どう考えても間に合わないでしょ。間に合うビジョンが見えない」

横山市長は9日、今後の取り組みについて、次のように話しました。

【大阪市 横山英幸市長】「場所の確保というのは非常に難しい中で、それでも空いている土地をどのように活用していくか。ご協力いただけるところを増やしていきたい」

■来年4月から30平方メートル超の店舗で喫煙禁止 「売り上げにも影響」と不安の声

喫煙禁止の波は、居酒屋にも。

これまで大阪府では、客席が100平方メートル以下の店舗であれば、排気面などの条件を満たしたうえで喫煙ができましたが、来年4月からは30平方メートルを超える店舗では原則喫煙禁止となります。

こちらの店舗も、喫煙禁止の対象になるそうで…。

【客】「店に行って吸えないのかってなると、ちょっと楽しみが半減ではないですけど、軽減されてしまうのはあります」

店側は、売り上げに影響が出るのでは、と不安の声を漏らします。

【天満酒蔵 岡久美子店主】「めちゃめちゃ困ります。30平方メートル以下の店に流れるというか、そっち選んじゃいますよね。今までタバコ吸ってる人が来られなくなると、売り上げにも影響すると思う」

喫煙者には厳しい、大阪のルール変更。

万博にむけて、大阪は、世界に認められる街になることができるのでしょうか?

■“屋内は全面禁煙”は世界の潮流 喫煙者への理解も同時に促進を

万博に向けて、大阪の街中での路上喫煙禁止の現状についてお伝えしましたが、万博会場ではどうなっているのかというと。

会場内の喫煙は全面禁止となっており、入場ゲート付近におよそ200平方メートルの喫煙所が設置される予定になっています。

一度入場した人は、会場の外に出て喫煙することを想定しているそうですが、喫煙者の方にとっては、ちょっとストレスが溜まるかもしれません。

【ジャーナリスト 鈴木哲夫さん】「1日60本吸ってました。狭心症になってやめたんですよ。それがきっかけだったから自分の意志で『やめよう』じゃないんですよ。だからちょっと僕だらしないんだけど、でもやめてみたらやっぱり分かるんだけど、受動喫煙とかで吸わない人にどれだけ迷惑かけたのかって僕は吸ってたから余計分かる」

受動喫煙対策というのも合わせて考えていかなければなりません。

【関西テレビ 加藤さゆり報道デスク】「受動喫煙って、お子さんであるとか、お店だったら従業員の方が、意図しない受動になってしまうんです。そこを防ごうっていうことで、いま世界的にも、例えばお店の中だったら全面禁煙とか、建物の中の全面禁煙っていうのは、もう世界的な潮流になっています」

「IOC(国際オリンピック委員会)の提唱してるのも、『スモークフリー』、タバコのないオリンピックを提唱していて、東京オリンピックでも屋内では全面禁煙になりました。日本でも受動喫煙対策として、改正健康増進法というのができて、それによって建物の中は基本的に規制対象になっています。加熱式タバコも含めて」

「東京でも東京オリンピックの前に受動喫煙防止条例というのが成立してますし、実は大阪府も来年の4月に、府としての受動喫煙防止条例というのが施行されるので、やはりそういう潮流にはある中で、一方で喫煙者に対しての理解も同時に促進を進めていかないと、なかなか実態にはそぐわないのかなという懸念は残ります」

博覧会協会は、今後、喫煙のルールについて、ガイドラインを策定する予定だということです。

(関西テレビ「newsランナー」2024年10月9日放送)

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