東京地裁=東京都千代田区で2020年1月15日午前10時36分、米田堅持撮影

 東京オリンピック・パラリンピックを巡る汚職事件で、組織委員会元理事への贈賄罪に問われた出版大手「KADOKAWA」(東京都千代田区)前会長、角川歴彦(つぐひこ)被告(81)は8日、東京地裁(中尾佳久裁判長)で開かれた初公判で「私は無実です。検察が勝手に作り上げた虚構だ」と述べ、無罪を主張した。検察側は冒頭陳述で、KADOKAWAの五輪関連業務は会長だった角川被告の意向で進められたと指摘した。

 起訴状によると、角川前会長は、KADOKAWA元専務と元五輪担当室長=いずれも贈賄罪で有罪確定=の2人と共謀。組織委元理事の高橋治之被告(80)=受託収賄罪で公判中=にスポンサー選定での後押しを依頼し、その見返りとして2019年9月~21年1月、計約6900万円の賄賂を渡したとされる。

五輪汚職事件の構図と裁判の進行状況

 検察側は冒頭陳述で、角川前会長が、高橋被告側へ金銭を支払うことの法的リスクについて元専務から説明を受けた上で、コンサルタント料名目とする方針を了承したと指摘した。

 一方、弁護側は、角川前会長には決裁権限がなく、社内で贈賄のリスクが指摘されてからも報告を受ける状況になかったとして関与を否定した。その上で、検察が誤った見立てで捜査し、角川前会長を逮捕・起訴した「冤罪(えんざい)事件だ」と訴えた。

 事件では、起訴内容を認めていた元五輪担当室長と元専務は、角川前会長と審理が分離され、それぞれ23年6月と10月に執行猶予付きの有罪判決が言い渡されている。元室長への判決は、五輪のスポンサーになることに強い意欲を示していた前会長が事件を主導したと認定し、元専務に対する判決も、前会長の意向により賄賂が渡されたとした。

 角川前会長は22年9月に逮捕され、23年4月に保釈された。起訴内容を否認したことで身柄拘束が長引き肉体的、精神的苦痛を受けたとして、国に2億2000万円の損害賠償を求める訴訟を24年6月に東京地裁に起こしている。

 事件を巡っては五つの贈賄ルートで計15人が起訴された。これまでに12人に有罪判決が出されている。【飯田憲】

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