会見する日銀の植田和男総裁=26日午後、東京都中央区(岩崎叶汰撮影)

日本銀行は26日の政策決定会合で政策金利を据え置き、3月に決定したマイナス金利政策の解除が経済に与える影響を慎重に見極める姿勢を示した。今後は追加利上げの時期やペースが焦点となる。植田和男総裁は円安進行が物価に無視できない影響を与えれば追加利上げに踏み切る方針を示唆しており、その手腕が試される。

植田氏は26日の記者会見で、今後の金融政策運営は「その時々の経済、物価、金融情勢次第だ」と強調。「(政策金利である)短期金利の水準は、毎回の金融政策決定会合で先々の見通しやリスクを丁寧に点検した上で適切に設定していく」と述べ、追加利上げの具体的な時期やペースなどについて言及は避けた。

ただ、為替変動が日銀の重視する基調的な物価上昇率に「今後影響が発生するリスクはゼロではない」と語り、今後の政策修正に含みを残した。

会見後に円安進行

26日の外国為替市場では植田氏が当面は緩和的な金融環境を保つ考えを示したことに加え、米国で利下げ期待が後退したことを受け、円相場は一時、1ドル=156円台後半まで円安が進んだ。中東情勢の緊迫化による原油相場の高騰も加わって消費者物価が上昇し家計に打撃を与える恐れがあり、政策修正への圧力は強まっている。

日銀は賃金と物価がそろって上がる〝好循環〟を追加利上げの判断材料として重視する。令和6年春闘は、大企業を中心に平均5%を超える33年ぶりの高水準の賃上げが実現する見通し。このため金融業界では、日銀の追加利上げは、物価変動を考慮した実質賃金が足元のマイナス基調から上昇へ転じることが予想される「夏以降」に実施されるとの見方が有力だ。

経済への打撃懸念

生命保険大手4社はいずれも最初の利上げ幅は0・25%と予想。明治安田生命保険の運用担当者は年内の実施を予想するが、「円安を要因として(資源価格上昇などを受けた)コストプッシュ型のインフレ圧力が高まれば、場合によっては7月会合で追加利上げの可能性もある」と分析する。

短期金利を引き上げれば、変動型の住宅ローン利払い費の負担が増えるほか、企業向け貸出金利の上昇など経済に大きな打撃を与えると懸念される。植田氏は「多様な影響を考慮しつつ、利上げをするなら注意深く進める」と述べた。(宇野貴文)

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