クマやイノシシ対策で「緩衝地帯」を設けるための連携協定を締結した大槌町の平野公三町長(左)とおおつち百年之業協同組合の佐々木重吾代表理事=岩手県大槌町で2024年4月23日午後5時35分、奥田伸一撮影

 岩手県大槌町は地元の人材派遣事業者や建設業者と共同で、クマやイノシシが生息するヤブや雑木林と町民の生活圏との間に「緩衝地帯」を設ける事業を始める。侵入路や隠れ家になりやすい箇所を伐採したり、餌になる果樹を除去したりして集落に入り込むのを食い止める。町によると、官民連携で緩衝地帯を確保する取り組みは珍しいという。

 近年クマやイノシシが集落に頻繁に出没する要因の一つに、過疎化や高齢化で山林の手入れが進まず、動物の生息域と人里が年々接近していることが指摘されている。このため大槌町は、山林と集落の間に手入れが行き届いた「緩衝地帯」を増やそうと、町内の人材派遣事業者「おおつち百年之業協同組合」と連携して事業を進めることにした。

 町が協同組合に作業を発注し、組合は町内の建設業者ら8社に割り振る。町が直接業者に発注する場合、入札など所定の手続きが必要だが、組合に委ねることで迅速な対応が期待できるという。小中学校周辺など23カ所、計12ヘクタール超を選定済みで5月中に着手予定。事業費1500万円を計上しており、特に年度初めは公共工事が少ないため、業者の経営安定にもつながるという。

 町役場で23日に開かれた連携協定調印式で、平野公三町長は「事業は町民の安全安心の確保と事業者の業務の平準化、経営の安定に資する」とあいさつ。協同組合の佐々木重吾代表理事は「地域課題の解決に寄与したい」と述べた。【奥田伸一】

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