日銀は20日の金融政策決定会合で、政策金利(無担保コール翌日物)を0・25%程度とする現行の金融政策を維持すると決めた。米国経済の不透明感が高まり、急激な円安の流れに歯止めがかかったこともあり、7月に続く2会合連続の利上げは見送り、物価や市場の動向を見極めることにした。
植田和男総裁は会合後の記者会見で、「(円高で)物価上振れリスクは減少している。政策判断には時間的な余裕はある」と金利据え置きの理由を説明した。7月末の前回会合では0~0・1%程度から0・25%程度に金利を引き上げたが、植田氏が会見で利上げの継続姿勢を示すと、円高が進行。米国の景気後退懸念が強まったこともあり、8月上旬に株価が乱高下し、内田真一副総裁が早期の利上げに慎重な姿勢を示して混乱の収拾を図った経緯がある。
米連邦準備制度理事会(FRB)は今月18日(日本時間19日未明)に4年半ぶりの利下げを決定。日米金利差が縮小するとの思惑から為替相場は、1ドル=140円台で推移し、ひところの歴史的な円安水準から円高方向に流れが変わりつつある。植田氏は「米経済のソフトランディング(軟着陸)が実現するのか、厳しくなるのか見極めたい」と警戒感を示した。
一方、日本経済については「企業収益が好調なことを踏まえると、来年の春闘でもしっかりとした賃上げが続くと期待できる」と指摘。海外経済の動向に注意を払いつつ、国内で賃上げの流れが持続し、サービス価格が上昇すれば「少しずつ利上げする方針は変わらない」と述べた。
20日の東京外国為替市場の円相場は、会見前は1ドル=141円台後半で推移。植田氏の発言を受け、「日銀は利上げを急がない」との受け止めが広がり、会見中に143円台前半まで円安が進んだ。午後5時時点は前日比1円12銭円安・ドル高の1ドル=143円62~64銭。【竹地広憲、浅川大樹】
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