パナソニックEW社の照明ソリューション「メリハリ照明」のオフィスでの使用例。消費電力は均一照明の55%(省エネ)で、作業面は十分に明るく、周辺面は程よく明るい状態となっている。下の均一照明の写真と比べてみてほしい Photo: Panasonic Electric Works
<ウェルビーイングな空間演出を可能にする、パナソニックの新たな照明ソリューション。照明が「照らすだけ」の時代は終わった>
蛍光灯や白熱電球をLED照明に置き換えると消費電力を大きく減らせることは、多くの人がご存じだろう。普及は進んでおり、環境省によれば、全国で6割の世帯が居間でLED照明を使用している。
2016年に閣議決定された「地球温暖化対策計画」では、家庭やオフィス、工場などにおけるすべての照明を、2030年までにLED等の高効率照明に置き換えるという目標が掲げられた。LED化は、温室効果ガス削減に向けた国の重要な施策でもある。
照明といっても、その役割は「照らすこと」だけではない。「照明による省エネ」が今や当たり前になりつつあるのだ。
そしてその「当たり前」を超える照明もある。
8月下旬に開催された、パナソニック エレクトリックワークス社(以下、パナソニックEW社)の事業説明会。照明を軸にした空間提案・ソリューション提案の一例として、同社が今年から展開する「メリハリ照明」と、新たなソリューションである新無線照明制御システム「LiBecoM(リベコム)」が紹介された。
上の写真と同じ場所で、均一照明を使った場合。一般的なオフィスの明るさかもしれないが、必要な部分を必要なだけ照らす「メリハリ照明」に換えることで、省エネ効果と従業員満足度アップの効果も期待できるという Photo: Panasonic Electric Works必要なだけ照らす「メリハリ照明」で大きな省エネ効果
メリハリ照明とは、小型シーリングライトやスポットライト、フラットランプペンダントライトなど同社のLED照明を活用し、必要な部分を必要なだけ照らすという照明ソリューション。さらなる省エネと、空間価値の向上という2つのメリットがあるという。
例えばオフィスの執務スペースであれば、作業面をピンポイントで明るく照らし、周辺の明るさを抑えることで集中力がアップ。休憩スペースではリラックスに適した照明にするなど、利用環境に応じた照明演出を行うことができる。
「メリハリ照明を導入したオフィスでは、集中力やコミュニケーションの向上など、働く人々の意欲を掻き立てるような効果が期待できると同時に、電気代の削減も実現できます」と、パナソニックEW社ライティング事業部の山中直氏は説明する。
山中氏によれば、蛍光灯の均一照明をLEDのメリハリ照明に換えると60%以上、LEDの均一照明からの置き換えでも30%以上の省エネ効果が期待できる。
奈良県庁のパイロットオフィスなど多くの自治体や企業で導入が進んでおり、実際に「気軽に上長と話しやすい雰囲気になり、風通しが良くなった」「手元が明るく照らされ、集中しやすい空間になった」などと、空間演出のほうも評判は上々なようだ。
手元のタブレットを使い、用途や空間に合わせた最適な光による空間演出や省エネを簡単に行える「リベコム」。ビーコン信号を利用した屋内位置情報サービスが利用でき、活用法は大きく広がる Photo: Panasonic Electric Worksタブレットで自由自在に空間を演出できる「リベコム」
もう一つの照明ソリューションである「リベコム」は、設定操作アプリを搭載したタブレットとシーン選択リモコンを使い、用途や空間に合わせた最適な光による空間演出や省エネを簡単に行えるという新無線照明制御システムだ。
天井に設置した照明器具から発信されるビーコン信号を利用した、さまざまな屋内位置情報サービスの利用が可能となるのもリベコムの大きな特徴である。
パナソニックEW社では、1台ずつの制御が可能な照明器具やセンサー、スケジューラーなど、幅広い施設で活用できる約4000品番のリベコム対応製品を11月1日に一斉発売する予定だ。
「これらを用途や空間に応じて組み合わせることで、商空間なら季節に応じた演出や、フロアや区画ごとに購買意欲を高めるような演出も可能になります。また、オフィスなら昼間は外光を利用して節電を行い、夕方にかけては快適性を維持しながら省エネ状態を維持するなど、自由自在な空間演出を簡単に実現することができます」と、山中氏は言う。
節電量が数値化される専用タブレットで、集中モードやリラックスモードといった複数の照明シーンを、省エネ状態を見ながら設定できる。いわばメリハリ照明の進化系だが、映像機器やスピーカー、空気清浄機といった同社製品との接続も可能で、トータルに快適な空間を演出できることも魅力だ。
店舗でのプッシュ配信、工場での作業効率向上も「照明」で
では、ビーコン信号を利用した屋内位置情報サービスとは何か。
リベコムでは2.4GHzの周波数を使って照明のオン・オフや調光を行うが、同じ周波数のビーコン信号にユニークなIDを付与して照明から発信し、それを各照明の下にいる人のスマートフォンが受信することで位置情報の把握ができる。
「従来の屋内位置情報サービスでは、電池タイプのビーコン発信器を棚や机などに設置する必要があり、障害物による電波の遮断や電池交換の手間などが課題になっていました。対してリベコムなら、天井からの信号発信なので電波が遮断される心配がないうえ、電池交換も不要となります」と、パナソニックEW社総合企画室照明立地活用プロジェクトの田上直紀氏は説明する。
同社はまず、店舗やオフィス、工場、病院などへのサービスの導入を目指し、その対象を順次拡大させていく計画だ。
「店舗においては、お客さまの回遊行動を分析して効果的な施策に繋げることはもちろん、プッシュ配信や来店ポイントの付与といったコミュニケーションにも活用できます。オフィスではフリーアドレスの利用環境の把握やより快適なスペースの創出、工場では人や重機の稼働状況を把握して作業効率の向上を図るだけでなく、作業員の見守りとしても機能します」(田上氏)
「エコ」と「心の豊かさ」の両立を目指して
これらの新たな製品を通じてパナソニックが目指すのは、ウェルビーイングな暮らしの追求だ。SDGsにおいても重要なキーワードの一つとして注目されるウェルビーイングは、身体的・精神的・社会的に良好な状態を意味する。体が健康であるだけでなく、心身ともに満たされた状態であることが重要だ。
「エコ」であることは時に人々に我慢を強いるものとなるが、パナソニックEW社は「エコ」と「心の豊かさ」の両立を目指しているという。「いかに少ないエネルギーで明るく照らすかという機能価値のみならず、人の心を豊かにする感性価値を伴った空間演出を実現する照明ソリューションを提供していきます」と、山中氏は話す。
今回の「リベコム」の登場で、そこに屋内位置情報のインフラとしての新たな価値やポテンシャルも付与された。
「当社の長期的な成長の鍵を握るのは、ウェルビーイングと省エネを両立し、灯りプラスアルファの価値を提供する空間価値ソリューション事業の拡大です。2030年までには『メリハリ照明』や『リベコム』のような空間価値を高める商品の割合を全体の40%に増やすとともに、天井照明を使った屋内位置情報サービスについても新たなポジションの獲得を目指していきます」(山中氏)
もはや「省エネ」だけでもない。照明の役割は今後、ますます拡大していきそうだ。
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