(ブルームバーグ):日本銀行が19、20日に開く金融政策決定会合でエコノミストらの予想通りに政策金利を据え置けば、為替市場で行き過ぎた円高に歯止めがかかり、日本株を押し上げるとの見方が市場関係者の間で広がっている。

ブルームバーグが日銀ウオッチャーを対象に行った調査では、回答者全員が9月会合で金融政策の現状維持を予想。7月の利上げが経済や相場に与えた影響を日銀は引き続き見極める必要があると市場が判断している証左だ。前回会合後の会見や国会の閉会中審査で継続的な金融政策の正常化に意欲を見せてきた植田和男総裁の会見内容にも注目が集まる。

日銀の次回利上げ、エコノミストの半数以上が12月と予想-サーベイ

調査リポート:日銀9月会合は現状維持予測-12月利上げが5割

景気後退懸念で米国では大幅な利下げ観測が浮上し、過去2カ月間の円相場は対ドルで161円台から一時139円台まで大きく円高・ドル安に振れた。日本企業の2024年度の想定為替レートである145円を突破して以降、円と東証株価指数(TOPIX)の逆相関は強まっており、株式市場が円高による輸出企業の業績減額リスクを警戒していることが分かる。

円高への警戒は日本株とアジア株のパフォーマンスの違いにも表れ、TOPIXの騰落率はMSCIアジア太平洋指数を6カ月連続で下回っている。アンダーパフォームの期間としては07年以降で最長だ。

野村証券の須田吉貴クロスアセット・ストラテジストは「第2四半期決算までは、ファンダメンタルズ投資家の関心は個別企業ではなく、為替」だと言う。

 

米連邦公開市場委員会(FOMC)は18日、主要政策金利の0.5ポイント引き下げを決定。一方で米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は、0.5ポイントの利下げ幅を今後継続するペースだと想定すべきではないと市場に警告した。

FOMC、0.5ポイントの利下げ-積極緩和で経済守る決意表明

金融政策を決める日米中央銀行のイベントを通過した後は、両国の金利軌道が明確化し、円高圧力が後退するとの見方が浮上している。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券の大西耕平上席投資戦略研究員は、金融政策の方向感から「緩やかな円高が続くという見通しは変わらない」とした上で、短期的には為替の動きはマイルドになり、「日本株のボラティリティーに与える影響は徐々に小さくなっていくのではないか」と述べた。

円高圧力が一服すれば、投資指標から見た割安感で日本株の再評価が進む可能性がある。相場の強弱を計るテクニカル指標の一つであるストキャスティクスは、TOPIXと日経平均の双方で売られ過ぎを示す30%に近く、TOPIXの12カ月先予想株価収益率(PER)は13.7倍と7月のピーク時に付けていた15.9倍を下回っている。

東海東京インテリジェンス・ラボの鈴木誠一チーフ株式マーケットアナリストは、日銀は「7月会合で想定外の利上げをしたことで、今会合でも何かするのではないかという恐怖感はある」としながらも、政策変更なしとなれば相場は落ち着き、日本株には割安感から買いが入ると予想する。

金利の織り込み不足はリスク

一方、日米の政治不透明感などから国内債券市場で日銀の追加利上げの織り込みが遅れており、今後金利が急上昇する可能性があるという点で日本株にとってはリスクだ。翌日物金利スワップ(OIS)が織り込む来年1月までの利上げ確率は6割弱と、エコノミストの約9割よりも低い。OISは金融市場の政策金利見通しを表す。

SBI証券の道家映二チーフ債券ストラテジストは「国債市場は年内の追加利上げの織り込みがかなり足りない」と指摘。10月からの日銀による国債買い入れのさらなる縮小を踏まえ、年末にかけ10年国債利回りが1%を試すような場面があるだろうとみている。

 

また、最近の為替市場が日銀幹部の発言に敏感に反応していることも相場の不安定要因として警戒される。市場ではハト派と目されている中川順子審議委員が11日、経済が日銀の予測通りに推移すれば、政策調整を継続するとの見解を示したことを受け、一時140円台まで1円70銭ほど上昇する場面があった。

三井住友銀行の鈴木浩史チーフ・為替ストラテジストは「141円前後の円相場は年内の日銀利上げを7割くらい織り込んでいるのではないか」と分析。日米の経済指標や米国の利下げペースなどの影響で、円は対ドルで135円まで上昇する可能性があると予測している。

--取材協力:船曳三郎、酒井大輔.

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