米ミシガン州イコースのUSスチールの製鉄所=2024年4月4日、大久保渉撮影

 複数の米メディアは17日、日本製鉄によるUSスチール買収計画を審査している対米外国投資委員会(CFIUS)が、日鉄の求めていた審査の再申請を承認したと報じた。審査結果についてCFIUSがバイデン米大統領に勧告する時期は、11月の米大統領選の後に先送りされる。

 米紙ワシントン・ポストによると、CFIUSによる審査は23日までに完了し、バイデン氏に勧告する予定だった。再申請を承認すると審査に更に90日間を費やすことになり、勧告のタイミングは確実に大統領選の後になる。

 買収計画を巡っては、民主党の有力な支持基盤である全米鉄鋼労働組合(USW)が反対しており、バイデン政権はUSWの意向を尊重する考えを示していた。9月上旬には、CFIUSが近くバイデン政権に「国家安全保障上の問題がある」と勧告し、バイデン氏が買収の阻止を正式発表する、と欧米メディアで報じられていた。

 だが、日米の経済界などから「政治事情で買収審査をゆがめるのは認められない」と猛反発があり、バイデン政権はシナリオを撤回。CFIUSが日鉄の再申請を認めて審査に時間をかけることで、バイデン政権としての判断を大統領選後に先送りした格好だ。

 大統領選を前にして、民主党候補のハリス副大統領、共和党候補のトランプ前大統領とも買収計画に反対する姿勢を示している。日米は同盟関係にあり、日本企業による米企業の買収には「国家安全保障上の問題はない」(エコノミスト)との見方が多いが、政治判断で買収が破談になる恐れが強まっていた。【ワシントン大久保渉】

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