(ブルームバーグ):米国に進出する日本の住宅関連3社の株価が好調だ。11月に行われる米大統領選挙では民主党候補のハリス副大統領、共和党候補のトランプ前大統領が共に住宅支援策に言及するほか、米連邦準備制度理事会(FRB)による継続的な利下げ観測もあり、日本株市場全体や業種別指数をアウトパフォームしている。

住宅メーカーで売上高に占める米国事業の比率が40%を超す住友林業、約15%の積水ハウス、外壁材メーカーで同比率が約20%のニチハの株価はそれぞれ年初から48%、22%、17%上昇。3社の平均上昇率29%は東証株価指数(TOPIX)の8.9%や東証建設業指数の16%を上回る。

数年にわたる物価高や金利の上昇で足元の米経済は減速感が強まっているものの、株式市場では新大統領による住宅支援策の推進期待に加え、9月の利下げ実施が確実視されるFRBの追加利下げ観測などが米市場に進出する日本の住宅関連銘柄の追い風になるとの見方が広がっている。

しんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹シニアファンドマネジャーは「最初はどの大統領も財政を緩くし、景気を押し上げる政策を取るパターンが多い」と指摘。利下げと共に景気がソフトランディング(軟着陸)していく形であれば、「住宅メーカーにとってすごく良い環境になるだろう」と述べた。

大和証券の木野内栄治チーフテクニカルアナリスト兼テーマリサーチ担当もリポートで、民主党、共和党共に住宅支援を打ち出しており、どちらが勝利しても住宅は期待できると指摘した。

ハリス副大統領は8月に公表した経済政策で、初めて住宅を購入する人を対象に最大2万5000ドル(約360万円)の支給を行う方針を表明。トランプ前大統領も住宅購入者支援の検討を示唆している。

 

ブルームバーグのデータによると、住友林株をカバーするアナリストのうち5人が強気の投資判断で、5人の目標株価の平均は6428円と10日の終値を3.6%上回る。住友林は8月、米国の戸建て住宅事業の販売単価や利益率が想定を上回っており、2024年12月期の営業利益計画を1615億円から前期比23%増の1800億円に上方修正した。アナリストらは25年12月期も平均で9.4%の増益を見込む。

積ハウスも5日、米国戸建て住宅事業の好調などを理由に、25年1月期の営業利益計画を3000億円から前期比18%増の3200億円に上方修正すると発表。上方修正は今期2度目だ。SMBC日興証券の田沢淳一アナリストはリポートで、「来期以降の利益成長加速も期待できるポジティブな印象」だと評価し、投資判断「1(アウトパフォーム)」を継続した。

ただし、米経済が予想以上に減速したり、財政負担の問題で新大統領が打ち出す政策が議会で反対されたりする可能性は米事業の割合が相対的に高い住宅関連企業にとってはリスクになる。

ニッセイ基礎研究所の佐久間誠主任研究員は、少しずつ雇用が悪化してきている中、本当にリセッション(景気後退)を避けられるのかという議論が再び高まっていると指摘。これまでになかったような金利の変化で住宅取得者の行動も読みづらく、「利下げにより住宅価格の上昇が加速するかというと、一概にそう言えない可能性の方が高いのではないか」と言う。

シティグループ証券の三木正士アナリストはリポートで、米戸建ての7-8月受注は月平均300戸台後半に減速しており、「当面は米金利と米戸建て受注の先行きに注目」するとしている。

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