防犯砂利は全部で37色。会社近くの石を拾って3Dスキャンし、金型を作った=豊川市で2024年8月22日午後4時43分、太田敦子撮影

 まるでゼリービーンズのようにポップで鮮やか。その正体は不審者の侵入を妨げる頼もしい「防犯砂利」だ。プラスチックを知り尽くした自動車部品メーカー「プラセス」(愛知県豊川市)が開発した。世界的な廃プラ問題ですっかり悪者扱いのこの素材に、新たな命を吹き込もうと挑む。

 プラスチック部品とその金型を製造して47年。パワーウインドー、エアコン、シフトレバーなどの、運転者が直接操作するスイッチ類を手がける。タイ、ルーマニア、メキシコなど海外5カ国にも拠点を置く。「本業はむちゃくちゃ堅いんです」と甲村尚久社長(58)は説明する。

 低コストで便利。プラスチックは生活を豊かにし、メーカーとして社会に貢献している自負があった。だが時代は変わった。海洋に流出し環境や生物を脅かすプラスチックごみの存在が、メディアに再三取り上げられるようになった。

 悔しい。工程で端材はどうしても生じてしまう。リサイクルはしても、安全上混ぜる比率に限度がある。行き場のないプラスチックたちをどうすればいいのか――。

自動車部品製造が9割を占めるプラセスを率いる甲村尚久社長=豊川市で、2024年8月22日午後4時50分、太田敦子撮影

 そこで2019年、社内にチーム「プラセスラボ」を発足させた。「自分たちで商品を開発して世の中に戻してあげればいい。ワクワクするような形で」。メンバーは幅広い部署から選抜した。

 第1号が防犯砂利だった。踏むと大きな音が鳴るように加工された砂利のことで、素材はガラスや天然石、セラミックなどが一般的だ。新商品の特徴はカラフルで発光すること。蓄光材を混ぜており、20分程度は明るさを保つ。非常灯や装飾としての役割も果たす。

 22年には名古屋駅前の商業施設「KITTE名古屋」が、高さ10メートルのクリスマスツリーの装飾に採用した。暗闇に幻想的なツリーが浮かび上がり、観客を喜ばせた。

 この他、金属並みの強度を誇るポリカーボネート製の補助ロック、ポリプロピレンの軽さをいかしたDIY用のタイルもある。材料はいずれも「行き場のないプラスチック」。素材を知り尽くしているからこそ生まれた商品だ。

 新事業の売り上げは年間2000万円で全体の1%にも満たないが、いずれは6億円規模に育てたい。そのためにBtoB(企業向け)も視野にある。「端材を回収し、うちの力で世の中に戻す。社会貢献したい企業に提案し、お手伝いするビジネスができれば面白い」と甲村社長。これからもプラスチックとともに成長を描く。【太田敦子】

自動車部品メーカー「プラセス」

 従業員188人。コロナ禍で大量生産された飛沫(ひまつ)防止パーテーションも、OEM(相手先ブランドによる受託生産)で防犯砂利に再生した。地元豊川市内の小学校には毎年、光る素材のキーホルダーを寄贈している。「子どもたちの喜ぶ顔がうれしい」と甲村社長。

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