米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は23日、年次経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」で講演した。7月撮影(2024年 ロイター/Kevin Mohatt)

米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は23日、年次経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」で講演した。インフレはFRBの目標である2%に向かいつつあるため、政策を調整する「時期が来た」とし、9月の連邦公開市場委員会(FOMC)で利下げに着手する可能性を示唆した。同時に、雇用市場の一段の冷え込みは歓迎されないという見解を示した。

パウエル議長は「インフレ上振れリスクは後退し、雇用への下振れリスクが高まった」と指摘。「政策調整の時期が到来した。進むべき方向は明確だ。利下げの時期とペースは今後発表されるデータや変化する見通し、リスクのバランスによって決まる」と述べた。


さらにFRBの「仕事はまだ完了していない」としつつも、物価安定回復に向け「かなりの進展を遂げた」とし、「インフレが2%回帰に向け持続可能な軌道に乗っているという確信が強まった」という見解も示した。

失業率が過去1年間に1%ポイント近く上昇したことについては、主に労働供給の増加と雇用の減速によるもので、解雇の増加によるものではないと指摘した上で、FRBは「労働市場のさらなる減速を目指しておらず、歓迎もしない」と強調。「物価安定に向けてさらなる進展を遂げる中で、われわれは力強い労働市場を支えるためにあらゆる措置を講じる。政策の制約を適切に緩和すれば、力強い労働市場を維持しつつインフレが2%に回帰すると考える十分な理由がある」と言明した。

<労働市場に重点、9月利下げ幅が焦点に>

パウエル議長は、労働市場の減速は「明白」だと指摘。パウエル氏が労働市場に重点をシフトさせたことで、9月に予想される利下げの幅に市場の焦点が移った。想定される利下げの幅は労働省が9月6日に発表する8月雇用統計に左右される可能性がある。

インフレーション・インサイツのプレジデント、オマール・シャリフ氏は「FRBが予定する一連の利下げのうち、何回かは幅が0.50%ポイントになる可能性があることが、パウエル議長の発言から示された」と指摘。同時に、一部当局者が0.25%ポイントの利下げを主張する可能性があるため、パウエル氏は必要に応じて0.50%の利下げも行うとの姿勢を示すにとどめ、選択肢を残したとの見方を示した。

一方、CFRAリサーチのチーフ投資ストラテジスト、サム・ストーバル氏は「パウエル議長は最初の利下げについて明言したが、その後の動きについてはさほど明確にしていない。そのため、いきなり0.50%ポイントの利下げに踏み切るとは思えない」とし、「緩和の初期段階は緩やかに着実に進めたいというのがFRBの考えだろう」と述べた。

市場では、政策金利が2025年末までに3.00─3.25%と、現在の5.25─5.50%のレンジから低下することが見込まれている。

[ロイター]


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