特集は深夜まで営業する美容室です。長野県松本市にあるその店の営業時間は午前0時まで。仕事帰りの人だけでなく家族と過ごす時間を大切にしたい人に支持されています。美容室の「長い一日」を取材しました。


車の量も減った夜10時。道路沿いの店に明かりが灯っています。

松本市征矢野の「ヘアエステ ポンテ」。完全予約制で、午前0時まで対応しています。

利用客:
「この時間から来られたら、子どもも寝た後で来られるので、こんないい話はないと思って」


主は1人で店を営む中村近由さん(41)です。

ヘアエステ ポンテ・中村近由さん:
「ほとんどが仕事帰りの方なんですけど、9時以降は男性が多い。(同業者に)いまだに言われますけど、『その時間にお客さん来るの』って。(どう返す?)やってみなって(笑)きっと喜ばれると思います、やってみたらわかるよって」

多様化するニーズに合わせて、8年前から、この営業スタイルです。


中村さんは安曇野市出身で東京の専門学校で美容師免許を取得。

帰郷して、松本市内の美容室で修業をした後、2012年、念願の自分の店を開きました。

予約は午前10時から可能ですが、この日のスタートは午後。


中村近由さん:
「お客さんも助かるし、僕も助かるなと思って、夜10時まで営業で始めたけど、やっぱり夜10時から来たいというお客さまがかなり増えたので、じゃあ24時までやっちゃおうかなと実験的に始めたら、すごく喜ばれたのでそのままずっと24時まで営業という感じになってます」


午後5時半―。

春休みということで、夕方、中学生が来店。

中村近由さん:
「どうする?」

中学1年生・塩原昊晟さん:
「前ちょっとだけ短くして、あとは短くする感じで」

塩原昊晟さんは3歳のころから通う「常連さん」です。


中学1年生・塩原昊晟さん:
「優しい人が髪切ってくれる、話も面白い。サッカーやってるので、サッカー関係の近くの山雅とかの話もします」


この日はサッカークラブの練習が休み。新学期が始まる前にさっぱり、カットしてもらいました。

中学1年生・塩原昊晟さん:
「髪もいろんなものも落としてもらって、新年度を迎えたいです」

3人目の塩原さんを見送ったらこの日の「前半戦」は終了。


午後6時過ぎ―。

妻・直子さん:
「おかえりー」

いったん、自宅に戻って夕食です。

中村近由さん:
「いただきます」

中村近由さん:
「(映画の)ゴジラ、楽しかった?怖くなかった?」

娘:
「音がでかかった」

夫婦と双子の娘の4人家族。

夜、一緒に食卓を囲むのは週に一度ほどです。

その分、家族との時間を大切にしようと土日に休みを取って旅行に出かけることもあるそうです。


小学5年生・歩乃花さん:
「(お父さん)お仕事頑張ってる。かっこいいと思います」

小学5年生・柚子花さん:
「休みながらかな」

妻・直子さん:
「休みながら頑張ってほしい?」

小学5年生・柚子花さん:
「うん」


妻・直子さん(41):
「頑張りすぎだと思ってますけど、仕事が好きで、お客さまと関わるのが好きだからやれてる。そんなに体調も崩さずやってくれてるので、大丈夫なのかなとは思いながら、心配はしている」

中村近由さん:
「(家族の時間を)なるべくつくりたいなとは思っているけど、なかなかそうもいかない部分もある。たまに旅行行ったりできるので、そのために頑張る感じ」


夜7時、再び店へ。

「こんばんは」


訪れたのは近くに住む会社員の野瀬加代子さん(55)。

もう10年ほど通っています。

中村近由さん:
「(娘2人)6年生ですよ、もう」

約10年通う・野瀬加代子さん:
「仕事しているので、この時間やってる美容院なかなかないので、お休みの日は自分の家のこととかやりたいこともあるので、この時間にやっていただけてありがたい」

建設会社で事務の仕事をしている野瀬さん。帰宅して、家族の食事を準備してから利用することが多いそうです。

中村近由さん:
「はい、お疲れさまでしたー」


忙しい年度末、髪を切って、身も心もリセット。

約10年通う・野瀬加代子さん:
「(仕上がりいかがですか?)軽くなった感じがして。決算も終わって、作成したりする書類があったりするのでちょっと忙しいです、年度末は。(仕事頑張れそうですか?)そうですね、頑張ります(笑)」


夜9時にやってきたのは会社員の田中久史さん(47)です。

インターネットで営業時間を調べてから通うにようになり、約6年。


約6年通う・田中久史さん:
「子どもが小さいので、公園に遊びに行って自転車乗ったり、ボールで遊んだりするくらいですけど、(休日の)昼にちょっと髪の毛行ってくるみたいな時間とられるよりは助かります」


転勤が決まり、4月、神戸に引っ越す田中さん。店を利用するのはこの夜が最後でした。

約6年通う・田中久史さん:
「(松本の)寒さも慣れましたし、慣れたら子育てにはすごい良い所。だから引っ越しにだいぶ反対されてますけど、子どもに。次いつ行けるか分からないからとりあえずさっぱりしとこうと」


3時間かけて縮毛矯正とカットをしてもらいました。

中村近由さん:
「こんな感じで」

約6年通う・田中久史さん:
「ありがとうございます」

中村近由さん:
「はい、お疲れさまでしたー」

約6年通う・田中久史さん:
「いつも通り満足です。こういうお店が次に行った先であったらありがたいけど、また探さなきゃいけないなと」

約6年通う・田中久史さん:
「長いことお世話になりました」

中村近由さん:
「体に気を付けて頑張ってください」


24時間しかない1日。

それぞれの「大切な時間」をつくるるために中村さんはこれからもこの営業スタイルを続ける考えです。

ヘアエステ ポンテ・中村近由さん:
「便利に使っていただきたいというのが一番。土日の時間を有効に使っていただける。僕一人では予約を受けきれるほどではないので需要はあると思う。ずっとやりたかった仕事なので楽しいですよね、やってて。1人ずつの空間として時間をとっているので、のんびりしていっていただければ」

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