小林製薬の本社があるKDX小林道修町ビル=大阪市中央区で、梅田麻衣子撮影

 小林製薬(本社・大阪市)の紅こうじサプリメントによる健康被害が相次いだ問題で、同社は23日、小林一雅会長(84)と小林章浩社長(53)が辞任すると発表した。後任の社長には山根聡専務(64)が就任する。創業家出身の2人が会長、社長から退き体制を刷新することで、信頼回復と経営の立て直しを目指す。

 一雅氏の辞任は23日付。章浩氏は8月8日付で社長を退き、代表権のない取締役として補償業務に専念する。創業家出身者以外が同社の社長に就任するのは初めて。

 同社の紅こうじサプリメントを摂取後、腎疾患やその他の症状が出て医療機関を受診した人は2200人以上おり、摂取と症状の因果関係の調査が必要になった死亡疑い例は約100人に上っている。

 この問題を巡っては、小林製薬の対応の遅さに批判が集まってきた。同社は1月中旬に最初の健康被害を把握した後、原因物質の特定を優先したことで3月22日まで約2カ月にわたって被害を公表しなかった。6月には遺族から届け出があった死亡事例を同社の判断で厚生労働省に報告していなかったことも判明した。

 小林製薬は23日、外部の弁護士で構成する「事実検証委員会」による検証報告書を公表。報告書は同社の初動対応について「遅くとも2月上旬以降、全社を挙げて早急に対処すべき緊急事態」だったとして、消費者の安全を最優先に考え、被害の公表や製品回収を急ぐべきだったと指摘した。

 これを受け取締役会は同日公表した文書で、社長の章浩氏について「リーダーシップを発揮することができず、結果として行政報告や公表の遅れを招いた経営責任は重大」と総括した。

 経営責任の一環として、章浩氏が月額報酬の50%を、山根氏が月額報酬の40%をそれぞれ6カ月分自主返上する。

 健康被害の恐れがあるとして、小林製薬が回収しているのは「紅麹(こうじ)コレステヘルプ」など3製品。厚労省は原料のサンプルから青カビ由来の天然化合物「プベルル酸」と、2種類の未知の化合物を検出した。プベルル酸は腎障害を引き起こすことが確認され、未知の物質についても影響を調べている。【妹尾直道】

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